74* 目を閉じると、そこにはあの日と同じ光が眼裏を彩る。 「あちー」 「何でこんなにあついんだろ」 すれ違う白シャツの人波は、手をぱたぱたさせながら、べたべたと歩いて行く。 アスファルトの照り返しが、頬を刺す。背中に汗がつたっていく。風はビルの壁に阻まれていた。 それでも、私は歩いていた。 今日は久しぶりに休暇をとった。休暇なのにわざわざ暑いところに来ては、人波に呑まれに行く。 私の、最近の自分の見つけ方。 エアコンの効いた部屋で暑いとごろごろしていると、それだけで終わってしまう。 悩んでいれば悩んでいるほど、外に出なければならない、と思う。 だから、私はこれからも、悩んでいたら外に出ようと思った。 広い青空が、流れる風が、明るい光が出迎えてくれる現実を今日も忘れないように。 |