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 今年もまた冬がやってくる。

 日に日に冷たくなっていく秋風は、まだ刺すようにとはいかない。しかしいずれ食らえるという余裕を孕んで少年の肌を撫でていった。首に巻いた布が風に流されていくのを少年は抑える。


 今年はまた生き残れるだろうか。

 こんな日々じゃなくて、安心して笑っていられるような日がほしい。


 少年の不安をよそに、星々は瞬いた。




 もう少しで、クリスマスかぁ。

 つい最近までかぼちゃだらけにしてハロウィンと騒いでいたくせに、町は早くもクリスマス一色だ。


 告白できるかなぁ。

 スマートフォンの電源をつけたまま、少女はベッドに制服のまま寝ころぶ。


 このままなのも嫌だなぁ。でも……。

 スマートフォンの画面が黒く変わる。


 ふられるのも怖いなぁ。


 それでも隣に理由もなくいられるような日々がほしい。

 黒い画面に映った電灯に少女は祈った。




 そろそろ、あれから1年が経つ。


 朝目が覚めて、1番最初に目に入るのは1枚の写真。青年2人が肩を組んで微笑んでいる。

 青年は自分ではないもう片方の青年へ目で語りかける。


 俺はもうすぐ、お前とは違う年になるんだ。


 永遠に年をとることのない青年は、何も語らず微笑むだけだった。


 あの頃は、ただ2人隣で笑っていられる未来がほしかっただけなのに、どこで間違えてしまったのだろう。




「いってきまーす!」


 黄色い帽子をかぶった娘が手を振って、門をくぐる。母親はそれを見送りながら手を振る。

 歩き方はもうずいぶんしっかりしてきたが、まだどこか危なっかしい。


 夫がいる家を出てから、もうすぐで1年が経とうとしている。


 娘とのありふれた生活がほしい。

 その願いに、私は近づくことができたのだろうか。


 目を閉じると、雪に足跡をつけて真っ白な世界を駆ける娘の姿が見える。

 もうすぐで冬がくる。娘に冬支度をさせなければ。


 母親はそんなことを考えながら、玄関の扉を静かに閉めた。



ありふれた明日がほしい
ありふれた日常、ありふれた願い






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