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 突風の音は時に、炎の燃える音に聞こえる。遮るものが何もない場所であるのならば、それは爆ぜる音と重なる。

 いつ倒れてもおかしくないような衝撃を受けながらも、少女は倒れるわけにはいかなかった。

 少女は足を1歩踏み外してしまえば、体が空中に投げ出されてしまう場所にいるのだから。



「……どうしたの?撃たないの?早く撃ちなさいよ」


 言葉だけ見れば威勢はいいが、彼女の声は震えていた。その少女を見下ろすのは、冷え切った双眸。瞳には金色を宿しているが、目を伏せているのでその光は翳って見える。

 その瞳と同じ色の布に身を包んだ女は、スカートの裾がはためくのをものともせず、銃口を少女に向けていたはずだった。


「……何で?」


 少女は自分に向けられていた銃口がゆっくりと下されていくのを見て、動揺を声にする。


「死にたいならそこから身を投げなさい」


 女は表情を緩めることもなければ、感情を交えることもない。


「逃げることを選択するなら、最後まで自分で責任を持ちなさい。あいにく、死にたがりにあげる弾はないのよ」

「そんなっ!いっそのこと全て終わりにしてよ!」


 少女の悲痛な叫びが女に届くことはない。


「望みが絶たれたところで、何も変わらないし終わらないのよ」


 女の声には抑えきれない悲哀があったが、少女はそのことに気づくことはなかった。少女は絶望に耐え切れず地に蹲る。


「戦うことを選ぶならば、いつでも歓迎するわ」


 少女を一瞥することもなく、女は踵を返して立ち去る。少女は女の小さくなる後姿ずっと見つめていた。そこには、吹きつける突風にも劣らないほど激しく炎が燃えていた。



 その時、女の姿は少女の未来の姿と重なった。



死にたがりにあげる弾はないのよ
選択には最後まで自分で責任を持ちなさい






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