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 僕らはその日、前もって約束していたかのように出会った。


「待っていたわ」


 その人はそれだけ言って、服に隠し持っていた銃を出した。僕はそれを見てもなかなかの余裕で、黒いボディスーツだと色気があってセクシーだなあとしか思わなかった。


「僕もずっと待っていたよ」


 心にも思ってなかったことをぬけぬけと言えるのは、その人を愛している故なのか、それとも――。答えの代わりに砂と埃を含んだ風が僕らの間を通り抜けた。



「じゃあ、早くはじめましょう」


 待ち合わせとしては砂漠に半分埋もれた廃墟という場所は、どれだけ殺風景すぎるか実感している間に、その人は銃を構えて引き金を引いた。



 しばらくの間、破裂音と金属の落ちる音が何もなかったはずの世界に響いた。お互い撃ち合っても2人とも血を流すこともなければ、怪我をすることはない。僕はその人に向かって撃ちながら、その人に1歩ずつゆっくり近づく。



 手が届く範囲に来ると、僕が手を伸ばす前にその人は僕の額に銃をつきつけた。


 そのまま銃で撃たれても構わなかったのだが、その人は銃を捨てて僕に体を預けた。



「……気は済んだ?」


 僕は銃を適当に後ろに放り投げた。


「……うん」


 その人は気だるそうな声でそう言って、僕の体に腕を回した。


「じゃあ、もう少ししたら現実世界に帰ろうね」

「……もう少ししたらね」

「うん」

「……明日も迎えに来てくれる?」

「うん」

「……良かった」


 その答えが『分かった』ではないことが気になったけれど、とりあえず僕はその人の背中に手を伸ばした。


反転世界で共食いしましょう
あまりにも生きづらい世界ですから苦しみをぶつけあってみましょう






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