28 珍しかった。彼女の方から天体観測に誘ってくるなんて。 そりゃあ毎年行くのが恒例みたいになってるし、数え切れないほど行っているから別におかしくはないんだけれどさ、いつも俺から誘うから嬉しいっていうか、期待しちゃうっていうかさ……。 でも友達関係である俺たちのために、俺はいつもと変わらないふりをしていた。彼女もそうしてほしいと願っているだろうし、それに……彼女の様子は変だった。 「……私、今日が死ぬところを見たいの」 そして待ち合わせ場所に集合時間30分前に会ってみれば、そんなことを言い出した。 「何で?」 彼女は悲しみに暮れている様子もなく、淡々とこんなことを言うから俺は彼女が今にも消えてしまいそうで怖くなった。 「見たことがないから。他に理由がいる?」 「……いや」 俺が答えるというかつぶやくと、彼女は歩き出した。 「……なぁ」 「何?」 彼女のことが心配で星を見るどころじゃなかった俺は、ずっと探していた答えを見つけて言った。 「今日って終わらないんじゃないかな」 「えっ?」 「今日は終わらないで明日につながっていくんじゃないかな」 彼女は何も言わなかった。伝わらなかったら他に何を言おうか考えている間に彼女は答えた。 「……じゃあ、見えない終りに感謝しましょう」 俺は答える代りに、時期外れの流れ星を今年も探すと宣言した。 見えない終りに感謝しよう 彼女はいつも通り笑ってくれた |