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 彼女曰く、それは間違っているのだということ。



「何で?」


 僕は何かに突き動かされて強く言い返した。


「何で?生きているものは全て死が最も幸福なら、なぜ生き物は全て死を選ばないのかしら。なぜ生き続けることを望むのかしら。なぜ子孫を残すことを求めるのかしら」


 彼女の白いワンピースが彼女が動いていないのに揺れる。どこからか風が吹いてきてるようだった。


「他のものだって本当はそう望んでいるはずだ」

「自分の感情を正当化するために他を巻き込むなら、他のものが正当化するためにあなたも巻き込まれるわ」


 彼女はぼくには僕だけの真実があるだろうと言っている。目はいつも通り、僕からそらされることはなかった。しかし僕はやはり、今もまだ彼女から目をそらしてしまう。


「……怖い」


 ゲーム画面はずっと真っ黒のままでベッドの上に転がっている。マンガやらゲームの攻略本は何層にもなって床に散らかっている。



「このまま変わることも、これから変わることも」


 彼女は何も言わないまま立ち上がった。僕がこんなことを言うから立ち去ってしまうのかと思ったら、彼女はまだそこにいてくれた。



「だから全て終わらせてしまおうと?でも分かっているはずよ。それはあなたが最も恐れている『変わらないまま変えること』だと」

「うん」

「選択肢は変わらないことを変えるか、変わることを変えないかのどちらかよ」

「うん」

「選択はできたようね」

「うん」


 僕は言葉以上叫び未満で答えた。


「会える日は近そうね」


 彼女は僕の選択を聞かないまま、そのまま背を向けて光の方へ向かう。それもそのはず。僕の選択肢は1つしかないのだから。



『未来で近いうちに会いましょう』



 彼女は光の中でまなざしだけでそう言って、光の先へ消えていった。白いワンピースの裾は名残惜しそうに、僕に向かって流れていた。

 次会った時は、ちゃんと彼女から目をそらせないようになりたいな。



 僕はカーテンのすきまからのぞく光にうっすらと照らされた部屋の片づけを、手始めにすることにした。



選択肢は両方という1つ
変わらないことを変えることも変わることを変えないことも同じだから






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