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 近いうちに少女は帰るだろう。


 村に着いたら、こんな予言を彼女が言っているに違いない。それで村のみんなが私が付く前に私の到着を喜んでくれている。


 うん。きっと、そうに違いない。



 そう信じる。無理矢理でも不可能でも。そうでもしなければ、1歩先へ行くことさえ困難な状態では村までは到底たどり着けない。思い込んで何が何でも足を前へ運ばなければ進めなかった。

 間違っても『死んでもう戻ることはない』という予言が出ているなんて考えないようにする。しかし考えようにしなければしないほど、その最悪の結末は頭を支配しようとする。



「――!!」


 完全に頭の中に最悪の結末が支配する前に、聞き覚えのある幻聴が聞こえた。幻聴と言い切れるのは、予言者である彼女がこの外の世界へ出ることを許されていないからだ。


「しっかりして!!」


 今度は幻聴と一緒に幻覚が見えた。


「あっ……」


 私がやけにはっきりしている幻覚に手を伸ばそうとすると、痛みと疲れが少しずつ退いていく。誰かが治癒魔法を使っている?あるいは天の国へ少しずつ召されているのだろうか。


「大丈夫よ。『あなたはこれから村に予言者によって戻され、村の人々に帰還を祝われる』だから」


 予言者の声でそう言って微笑む彼女の言葉は、痛みを知るこの世界でも美しかった。



痛みを知るこの世界でも
美しいものは美しいままだ






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