47* 彼女曰く、未来は先にあるのだという。 「はあ」 前も後ろも右も左も分からない僕は、肯定とも否定ともつかない息以上ため息未満を答えた。それは答えと言うよりは、ただの反応だったかもしれないけれど。 『未来なんて時間稼ぎしてればたどり着けるだろう』 そんな本音を押し隠して、常時装備の『愛想笑い』という仮面を。 「だからね、未来は今日にはないのよ」 「はあ」 「明日にもないの。もっと先にあるのよ。それはいつかなんて決まってないし、誰にも分からない」 「はあ」 僕は息よりもかろうじて形になるものを吐き出すだけ。 「だからね、あたしは今のあなたを否定しないわ」 『”いつか”で待ってる』 彼女が言わなかったその言葉を聞きとって、僕はマンガやゲームの攻略本やらで足の踏み場がない自分の部屋に戻っていた。 彼女が来たことを知らせるのは、自動節電のため画面の暗くなったゲーム機だけだった。 未来は先にある だから今を否定しない |