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 彼女曰く、未来は先にあるのだという。



「はあ」


 前も後ろも右も左も分からない僕は、肯定とも否定ともつかない息以上ため息未満を答えた。それは答えと言うよりは、ただの反応だったかもしれないけれど。


『未来なんて時間稼ぎしてればたどり着けるだろう』


 そんな本音を押し隠して、常時装備の『愛想笑い』という仮面を。



「だからね、未来は今日にはないのよ」

「はあ」

「明日にもないの。もっと先にあるのよ。それはいつかなんて決まってないし、誰にも分からない」

「はあ」


 僕は息よりもかろうじて形になるものを吐き出すだけ。


「だからね、あたしは今のあなたを否定しないわ」



 『”いつか”で待ってる』



 彼女が言わなかったその言葉を聞きとって、僕はマンガやゲームの攻略本やらで足の踏み場がない自分の部屋に戻っていた。



 彼女が来たことを知らせるのは、自動節電のため画面の暗くなったゲーム機だけだった。



未来は先にある
だから今を否定しない






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