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「で、これは何なの?」

「花だって見れば分かるだろ?」

「そんなの分かるわよ!そうじゃなくて、”誰へ”のかって聞いてるの!」


 ただいま絶体絶命中!まさか見つかるとは……。


「だから、これは……」

「『女』でしょ!こんなかわいいピンク色のなんて選んで!」

「そりゃあ、女の人にあげる予定でしたが……」


 姉のあんたには関係ないだろうと言いたいところだが、理由も理由なのではっきり言えない。

 どう切り出そうか考えながら、目の前の薄ピンク色のカーネーションの鉢植えを見つめる。


「どこの女よ!」

「はぁ」

「ため息じゃなくてさっさと真実を吐きなさい!」


 しかたないな。いきなりプレゼントしてびっくりさせたかったんだけれど……。


「はい、これ」


 これ以上あげようとしている相手に怒鳴られると気分が悪いので、俺は前にそっと鉢植えを差し出した。


「えっ?『女』じゃなかったの……?」

「いつから俺の『兄さん』になったの?」


 照れ隠しのつもりではぐらかす。


「私に?これカーネーションじゃない。母の日は先週だったけれど……」


 とりあえずずいぶん遠回りはしたけれど、びっくりさせることは成功したので白状することにした。



「だから今週の日曜日は『姉の日』にしようと思って」

「えっ……」


 やっと姉を打ち負かすことができたかと思ったのは数秒、姉が意地の悪いと俺の中では変換される無邪気な笑みを見せるまでだった。



「私がタイプなら早く言ってよ、もう。みんなには内緒にしておくって」

「違う!!」


 まだまだ姉に勝てない日は続きそうだ。


5月の第3日曜日にもカーネーションを
いつもありがとう






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