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 『いつか』でいいのよ。だから、いつかで。


 目立つのが目的である真っ赤なマントが風に揺れる。

 彼がかつてその色を選んだのも、今もその色を選び続けているのも、有名になりたいからではなかった。目立ちたいからでもかっこうつけたいからでもなかった。

 『敵にすぐにみつけてもらうため』それだけだ。



 彼がこの派手なマントを着て、この街を守り続けてから十数年が経った。


 彼の素顔を知るのは今もたった1人、私しかいない。

 ヒーローに赤以外に似合う色があることも、私しか知らない。



「ごめん、次は必ず……」

「そうね。また『いつか』ね」


 守られることのなかった約束を、すぐには守られることはないだろうけれどまた約束した。


「後のことは私がやるから、あなたはいつも通りに」

 彼にうなづく以外のことをさせる前に、私は背を向けた。



 今年もお花見ができないまま春が終わっていくように、今年の夏も海には行けなさそうだ。

 でもそう、私たちの時間は未来でいい。彼が戦わなくてよくなったら、その時に約束を守ろう。


 いつかの約束をふり向いて、彼の背に託した。



いつかの約束
守られるのは『いつか』でいい






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