42 彼女は最後まで笑っていた。 俺が悩んでいるのに、どうして最後のあの時、彼女はいつも通り心配そうな顔をすることなく、「大丈夫だよ」なんて言って笑っていたのか。答えを今知らされた。 今から思えば、彼女は最初からこうするつもりだったのだ。彼女のことだから最初から決めていたのだろう。推量じゃない。断定できる。 彼女の性格は分かっていたはずだった。いつも明るくにこにこしていて、子供に負けないくらいはしゃいでいた。 それは全て嘘じゃない。だけれど、彼女はそれだけではなかった。 片鱗はいつも見せていた。 彼女がどんな一面を持っていても、隠し事ができない素直でまっすぐな性格ということに変わりはない。 だけれどそれは、全てこの時のためだった。 だからこそ、ここまでのことを今、残しておいたのだ。昨日彼女から送られてきた謎のメールの本当の意味が、やっと分かった。分かりやすいと思っていた彼女の性格にまんまと踊らされた。 彼女の性格のズレに違和感を全く感じないのは、それだけ彼女の覚悟が強いから……いや、それだけではない。彼女が俺だけじゃないここに集まる全ての人々を愛していたからだ。 だからこそ、彼女はそれを一番に考えた。そして、だからこそこの方法を取った。 それが違和感がないのも、計算に感じないのも、やっぱり彼女が無邪気に感じるのも、彼女が昨日メールの最初に送った言葉を知っていたからだ。 『人間は1以外の数字であってはならない。だから、無理をしないでね。』 彼女は彼女らしく、俺が俺らしくあれるように、裏で全て終わらせてくれた。後は、俺がそのことを気にしないで、いつも通りにふるまえばいいだけ。 彼女への感謝は次会った時に伝えるとして、今はいつも以上に明るく笑っていよう。 彼女もきっと、そうしたら喜んでくれるだろうから。 俺は彼女に次会ったら、彼女のやり方で感謝を伝えることを決めた。 彼女は最後まで笑っている 未来へのメッセージを託したまま |