39 その手を取るわけにはいかなかった。 たとえその手がさしのべられていたとしても。 何年もこの世界で生きてきて、自分の望んだ世界ではないことを知った。自分の望んだものさえも思い通りにならないことも知った。 だけれど、理解はしていない。理解することもしたくない。時間が経っていくうちに、やがて少しずつ受け入れなくてはならないとしても、それでも……。 『大丈夫よ』 ずっと視線を感じている方へ、やっと覚悟ができて目を向けた。予想通り、まだ友人である相手と目が合った。 私は分かりやすいらしいし、相手はよく私のことを理解してくれているから伝わるはずだ。……余計なことまで伝わっていたら困るのだけれど。 そう感じて何だか後ろめたくなって、すっと目をそらした。視界で確認することはできないが、相手には伝わったはずだ。 できないことがあることも、目に映るものも、目で移せるものにも全て限りがあるものだということも気づいている。私は覚悟が決まる前に、明日へ歩き出した。 だけれど、だからといって、この人を使って同じことを繰り返すわけにはいかない。今、私がするべきことは、目をそらさないこと。目に映るものを恐れないこと。 この人とここで会うことを選んだ私のために、この人と一緒にいたいと願う私のために。 その目で私を映していてくれる人のために。 この手が救いだと信じて これから目に映る全てへ |