03 ※流血表現あり もしも出会ったのが、雨だったなら。あるいは夜だったら、すぐに私たちが違うことなんて分かったのにね。 運命というのは少しでも夢に向かおうとするために、現実味をおびればおびるほど皮肉なものに変わる。 「な、何でですか……?」 外では雷が鳴っているようだ。時々部屋の中を白く冷たくだからこそ美しく照らし出す。しかし、彼女だけはそこからかけ離れた世界にいるかのように異なっていた。 ほら、暗いところならこんなにもあなたが違うことが分かる。 「何でここまで来たの?」 「だって、助けてって声が聞こえたから」 助けを呼ぶ声が聞こえれば、どこへでもどこまででも行ってしまうのは彼女の良いところだが、時にそれは痛恨のものとなる。 何だってそうだ。それが他人や周りと際立っていれば際立っているほど、強く足を引っ張る。 だけれど、多くの場合その時は本人は気づかない。 「こうすることでしか救えないものもあるのよ」 まだ私の顔を見つめている視線が耐えられなくて、私は突き放すように言った。 しかし私がこんなことを両手を真っ赤に染めて言ったところで、彼女はやはり信じないだろう。 彼女が救おうとしたモノは、今私の足元に転がっている。もう自分からは決して動くことはないだろう。大きな図体を広げ、それ以上に無駄な広さで床に色を付けている。 「今すぐ治療を!」 「無駄よ」 私がターゲットを逃がすなんてミスをするはずがない。それは初めて任務を任命された時に彼女も分かっているはずだ。 「まだ間に合います!」 彼女はそう言って、私が壊したモノをあおむけにして胸のあたりから流れる液体を止めようとした。私はもう一度彼女に同じことを言うのが本当に無駄なことのように思えて、窓の外に目を向けた。 なぜか彼女の手を染めるそれさえも、自分とは違うもののように見えて目をそらしてしまった。感情という感情を全てとうの昔に捨ててしまった私にしては考えられないことだった。 外は暗すぎて、窓には幽霊のような死神のような自分がしか映らない。外の様子は分からないが、強風が吹いているようだ。 ふとその音を聞いて、彼女の手についた血が何に似ているか思い出した。 そして、彼女と自分がどれほど違うものか改めて思い知らされるのだった。 同じ赤だというのに 両者はひどくかけはなれていた 奪うものと生かすもの |