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21*

 
「Trick or Treat!!」

「……今そんな気分じゃないんだけれど。だいたいハロウィンなんてもう過ぎただろう」


 姉である彼女は、いつになっても無邪気だ。弟である自分よりも子供っぽいなんて普通だ。


「えーーっ、つまんない。また仕事?」

「見れば分かるだろ」


 彼女のこういうところはいつものことなので彼女の方を見ないまま、パソコンのキーボードをたたく。ふと目の前が明るくなったけれど、彼女が電気をつけたからだろう。



 それを無視していたら、キーボードにお菓子の雨がふってきた。



「ちょっと何するんだよ!」


 姉はなかなか器用で暗号がうちこまれたり、何かが消えたりという支障はなかったけれど、姉のこんな行動は慣れているとはいえびっくりした。


「弟が頑張っているからごほうび!」


 お菓子をキーボードからどかしているとそんな無邪気な声が聞こえたので、やっぱり彼女は憎めないなと思ってしまった。


「辛い時こそ、楽しいことは忘れちゃいけないと思うのよね」


 口癖のようになっている言葉を姉が口にした。しかし彼女がこの言葉を口にするときは、何かから逃げるためでも、何かから目をそらすためでもない。



 僕はそのことを知っているから、パソコンの画面から目を離した。



「今の時代『Trick and Treat』だからさ、姉さんにはお菓子と愚痴をあげるよ」

「何それ!だいたいそのお菓子あたしがさっきあげたのじゃん」



 彼女はそんなことを言いながらも、笑いながら近くにあったイスを引き寄せた。



少し遅れたハロウィン
何もかも僕ららしいと思いだすために






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