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18*

 
 いざその時になってみると、予想していた以上に緊張した。


 こんなことを言うと最初から緊張なんてしてなかったかのように聞こえるが、昨夜は一睡もできなかった。


「大丈夫だから緊張しないで」


 穏やかに微笑む彼女は、出会った当初と変わらずそばにいるととっても安心できる存在だった。だからこの先もずっと一緒にいたくて、今日のことを決断したのだけれど……。


「お父さんは反対しないと思うよ」


 確かに以前何度か会った時の彼女の父は彼女と似て穏やかだったけれど、さすがに『娘さんを僕に下さい』なんて言ったら穏やかではいられないだろう。


「大丈夫、大丈夫」


 彼女はそんなことを言いながら、まだためらっている俺を家の中へ入れてしまった。





「家の娘でいいならもらってくれ」

「……はっ?」


 思わず聞いた方が聞き返してしまうほど、その答えはあっさりだった。


「だいたい、娘が反対していないのに私が反対してはおかしいだろう?」

「確かにそうですけれど……」


 反対をされなくて嬉しいはずなのに、なぜか俺は素直には喜べなかった。


「ちょっと待ったーー!!」


 俺がなぜこんなに複雑な心境なのか考えていると、別方向から男性の声がした。声のした方を向いてみると、そこには俺とは数個年上そうな男性がいた。


「そんな簡単に妹をやるわけにはいかない!」


 初対面だけれど、『妹』という単語が出ていることから、彼は彼女のお兄さんなのだろう。そういえば、彼女は以前、とっても優しいお兄さんがいると言っていたっけ。ん?優しい……?


 視線を感じておそるおそるそちらを向くと、ギラギラと光る彼女のお兄さんの目を見つけた。


「お兄ちゃん、私たちの結婚に反対なの……?」

「い、いや、そうじゃなくってなっっ!これは、その……」


 彼女が少し震えた声で聞くと、さっきとは別人のようにしどろもどろになるお兄さんを見て、俺は止める前に笑い出してしまった。


「何笑ってるんだよ!俺は認めたわけじゃねぇからな!」


 彼女のお父さんに反対されなかった時は感じなかった安心感がこみ上げてきて、俺はますます笑い声を大きくしてしまった。



 よかった。彼女をこんな風に大切にしてくれる人がいて。



お兄さんからの反対
彼とはとても気が合いそうな予感がしている






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