16 「嘘でしょ!?」 天気予報では降水確率0%だったのに、朝起きてみたら見事に湿度100%になっていた。 「どうしたのーー?」 のんびりしたやわらかな声と共に、私のおなかに腕がのってきた。彼は幸せな時ほど声がやわらかくなるという癖がある。その声を聞くといつも幸せになるんだけれど、今は違う。 「今日は海に行くのすっごい楽しみにしてたのに!!」 「また今度行こうよ」 何が幸せなのか、耳元の彼の声はさっきよりもさらにやわらかくなっていた。 「だってさ、今度いつ休みが合うか分からないんだよ!今日だって1カ月ぶりの休みだったのに……」 結婚してから数カ月が経った。お互い仕事が忙しくてすれ違いの生活が続いている。それは結婚前から分かっていたことだけれど……。やっぱり実際続いてみると寂しくなる。 「かわいい奥さんのためなら休みとるから」 「いいよ。忙しいんでしょ?」 何だか彼が優しくしてくれるから余計寂しくなってきて、おなかにある手をそっと握った。 「寂しいの?」 心に直接しみこんでくるような声に、私は何も言えなくなってしまった。それでも彼にはしっかり通じたみたいで……。 「かわいいな」 後ろからそっと抱きしめる力を強めて、彼は今にもとろけそうな声で言った。 「今度は3人で行こうな」 「えっ?それって……」 私が何か言う前に、私のおなかをそっとなでながら彼は今にもとろけそうな声で言った。 「とりあえず今日は雨が降ったから、一日中家でイチャイチャしていられるね!」 彼はそう言って私のほほに口づけした。 ほほに降る雨は あたたかくて優しくて |