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虹の指針


 雨の日にだけ使える虹のコンパスを持って、指針が示す方へ薄暗い放課後の校舎を歩く。

 虹のふもとには宝があるという話もあったし、確かにどこかを指していたので暇つぶしに歩き始めた。

 何でも『今一番大切にしたいもの』を指すそうだ。確かに七色の光はどこかを告げていた。

 不思議なことに、たまに方向がずれてしまう。やはり迷信なのか。


 暗くなるまで歩き続けると見たことのある後ろ姿を見つけた。


 隣のクラスの女の子。

 まさか。


 虹の指針は真っ直ぐ彼女を指していた。


 おもしろ半分で声をかける。


 後にこの話をすると彼女は言った。


「あら、大切にしたいものが動かないなんて誰が決めたの」


 どうやら、僕はこの運命にかけてみるしかないらしい。





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