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与えるものとは奪うものか


 私は怪盗。今まで存在しなかった怪盗。

 人間というのは愚かで、失わなければ大切なものに気づけない。裕福な人間や恵まれている環境にいても幸せに気づかない。さらに求めて得られないと嘆く。

 私はそんな輩に何が大切か思い知らせるために奪う。全員が気づくわけではないが何人か気づくならそれでいい。


 雪が降りそうな雲で空が染まる頃、愚かな催しが幕をあける。高価なものが欲しい、自分の望むプレゼントでなければ不満、そんな輩で溢れる。私が失ったものの隙間に寒さがしみる。良い序章だ。腕が鳴る。しかし私の望みは、私が怪盗をしなくてすむ世界だ。残念ながらまだ遠い。



 さて、何人私が怪盗と装っているだけということに気づけるだろうか。