街が怪盗被害に苦しめられていた矢先、私に予告状が届いた。 『お前の一番大事なものを明日奪いにいく』 身に覚えもなければ高価なものもないが、家族に何かあっては悔みきれない。家族を地下室に隠し、その扉を二十四時間見張った。二十四時間経っても誰も現れなかった。 地下室の扉を開けると、家族は怯えた顔だったがみんな無事だった。安心したのもつかの間、一番大事なものが奪われていることに気づいた。 私は家族と過ごす時間を二十四時間も奪われていた。しかし怪盗も愚かだ。奪われたが私達は与えることができるものではないか。 早速今日は仕事を休みにして家族と過ごそう。もしや怪盗はわざと予告状を出したのかもしれないと頭をかすめた。 |