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雨折


 暗闇の中半透明の光を従えて長身の青年が一人姿を現した。足を止め背から何か振りぬく。其れは青年の背丈ほどもある大剣であった。青年が無造作に太刀筋を描く度、光は重力に逆らい屈折して形を成す。点と点は繋がり線となり、さらに面として新たな意味をもつ。

 完成形に近づくにつれ、雨脚は鳴りを潜めはじめた。大地から天空へ剣を振り抜くと雫を散らせ羽を広げる。集約された雨は折鶴の形と成った。


 通常次の地へ飛び立つはずが、折鶴は羽ばたきながら青年の方へ顔を傾げる。


「珍しいものだ。共に行けばすぐ窮屈になるだろう」


 変わらぬ様子を見て青年が仕方なく背に乗ると、雫を散らせながら飛び立つ。背の半透明の虹が夜明けを告げていた。