こいつ、いっつも何考えて生きてんだろ。荷物の整理をしながらちらりと名前の方を見る。

今回のギルドの任務は簡単なものだから、ラピードは彼女の家に置いていくことにした。旅が終わってもなにかと忙しく、散らかったままになっているあの部屋に置いていかれることを、ラピードが許すはずもない。
馴れ親しんだ下町の小さな家のなか、オレやフレンよりも数年遅く生まれた彼女は、陽が程よく当たる場所を陣取って目を閉じているラピードの周りを、忍び足でぐるぐると回っていた。

何してんだ、この言葉はオレと彼女の間では最早使い古されたオルゴールのように上手く聞こえなくなってしまっている。つまり、オレは聞いても無駄だということを良く分かっているし、彼女だってオレに説明しても分かってもらえないということを良く理解しているのだ。もう1人の幼馴染みやお姫さまみたいな天然との場合と違って、オレと名前との意思疎通というのは、おそろしく複雑な、とてつもなく根気のいる作業である。
けれどやはり、この世で一番愛している人と考えを共有したいという気持ちは何処かにあるのだろうか、オレが聞かなくても彼女は何故その行動を取るに至ったのかを事細かに説明してくるし、オレもその説明を熱心に聞いて、どうにか理解しようと、どうしようもなく努力してしまうのだ。

「ラピードとねえ、かごめかごめ出来るのかなあって思って」

ぺたり、素足が床と擦れる。
時折瞼がぴくりと動くのでラピードも気付いているに違いないが、起き上がることもなく、名前の好きなようにやらせている。普段は素っ気ない態度を取るくせに、ラピードもなんだかんだ言ってこいつには甘いよなあ、ひとりごちながらラピードの分の荷物を鞄から出した。

「なんでラピードとかごめかごめしようと思ったんだ?」

「うーんとね、ユーリが居ないときでも、寂しくないかなあって」

聞きながら装飾品をなぞっていた視線が、ぴたりと止まった。


「さみしい、のか?」

けれど彼女の方を見ることは出来なくて、オレは視線をそのままにして口を開いた。とんとんと彼女が歩く音だけが響く。眼は荷物の確認を再開した。頭は、まだとまっている。

「でもねえ」

とん、響いていた足音が止む。


「赤ちゃんとラピードと3人なら、かごめかごめ出来るなあって思って」


思わず、顔を上げて名前を見れば、同様にこちらをみた彼女と目が合った。そのまま動けないオレに、あの日、まだオレ達がなにも知らずにただ遊び暮らしていたあの日々に、オレ達の後ろをついて回っていた少女と同じ瞳で、女はやわらかく笑いかけた。


おいかけっこ
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