まだしばらくかかりそうなので先に寝ていてください。口を開きながら入った寝室では、名前がベッドの上で転がっていた。うつ伏せになっている少女に近付くと控えめな呼吸音が聞こえてきて、既に眠っているようだ、バーナビーは溜め息をついた。その拍子に目に入った少女の右手の側には、シーツよりも少しくすんだ色をした、丸い字で数式の書かれたプリント。珍しく静かだと思っていたが、どうやらテストが近いらしい。

いつもなら虫がいたとかお腹がすいたとかタオルがないだとか、何かにつけて助けを求めてくる彼女が部屋に籠もって1人でうなりながらテスト勉強をしていたと思うとおかしくもあり、またどことなくいじらしくもあった。途中で寝てしまっている辺りも含め、普段は大人ぶっている彼女もまだ高校生なのだなと些か年寄りめいた考えさえ浮かんで、パートナーの影響を受けてしまっているのかも知れないと、バーナビーは眼鏡の奥で静かに苦笑した。

いくつかのプリントとベッド脇に転がるデニム地の筆箱、投げ捨てられてている幾つかの教科書を拾い上げ、部屋の隅でくたびれている彼女の鞄にいれる。普段は酷く軽いそれの中からは沢山の教科書やノートが覗いていた。日頃から勉強しておけば良いのに。極めて優等生らしい呟きを漏らしたバーナビーは再びベッドに歩み寄り、自身とは違う黒くてくせのない髪を撫でる。
一応部屋着に着替えているし、シャワーも浴びているようだ。髪の間に埋もれる小さな耳にそっと口を付け、少女の身体にタオルケットを掛けてからバーナビーは自身の寝室を出た。珍しく本当に疲れているのだろうし、放っておこう。自分は別に普段通りの疲労だし、ソファーで仮眠を取れば問題はない。らしくないくらいに甘やかしすぎている、なんて、当の昔に気付いている。


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