ラケナリア

「ロシアには戻ってこないの」

最近そんなことをよく聞かれるようになった。

同棲でもしたいんだろうなと予想はつくけれど、なんとなくそうできないでいた。

まず二人きりで新居に住むとしたら金がかかるし俺の体がもたない。

今のイヴァンの家に住むとしたら昔の嫌なことばかり思いだしそうだ。

けれどヴェストには俺が消えても大丈夫なように成長してほしいし、離れる頃合いはちょうどいいとは思う。

離れがたいのだ。

ドイツを、我が国を。

同棲したいという気持ちはなくはない。

いつもいつも会議の終わりにイヴァンと会って翌日には慌ただしくドイツに帰る。

そんなときはイヴァンと離れるのが名残惜しい。

恋人同士なのだからもっと一緒にいたい。

思い切り困らせて笑ってやりたい、あの大きな体を受け止めてやりたい。

そんな風に思うことはあるのだ。

悪い、と何度も謝った。

罪悪感を感じるくらいなら一緒に住んでしまえたらどんなに楽だろうか。

ドイツにいたい。

イヴァンとも会いたい。

そんな我儘は通らない。

どちらか一つだけ。



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