ブーゲンビリア

手紙をぼっちゃんに送った。

俺が書いた肝心なことはほとんど削られていたらしい。

帰ってきた返事はお下品な言葉はおやめなさいだの、体調を心配するような内容だけだった。

そんなことが続いてしばらくしたある日、ある噂が耳に入った。

ドイツに帰れるかもしれない。

そんな希望をもってしまうような計画だった。

そしてまたある日、俺は準備を整えてイヴァンの家から出た。

イヴァンは外出中だったし、計算通りあっさり抜け出すことが出来た。

普段から買い物に行くこともあるのだから家を抜け出すこと自体は容易だ。

しかし、ロシアを出るとしたら帰る場所などどこにもなかった。

そのときはヴェストのところにすぐ戻ることはできねーからな。

他国の協力が必要だった。

俺は、東ドイツ国民と合流して共にハンガリー側の協力でオーストリアに逃げ出した。

上ではてんやわんやの騒ぎでドイツ側からの批判も出た。

あとで聞いた話だが「あなたたちが、国民が逃げ出すような国にしちゃったんでしょーが!」と、エリザがドイツの上司に説教しておさめていたらしい。

そんなこと言われちまったらぐうの音も出ねぇよな。

あのときはごちゃごちゃがいっぺんに来てたけど、今思えばあっというまで気がついたら壁は壊されていた。

ヴェストに会ったときはまじで嬉しかった。ああ、戻ってこれたんだなドイツに、って実感が湧いたぜ。

俺がいなくなって、壁が壊れたときイヴァンは泣いていた。

あいつは気づかれてないと思っていたらしいが、遠くで俺達を見ているのには気づいていた。

俺が国に帰る、ただそれだけのことなのにイヴァンにとっては俺が消えることと同じらしい。

手に入れておかないと不安になる、とも言っていた。

その言葉通り、俺は現在消えそうになっている。

正確には消えてもおかしくない、か。

ある日突然消えてしまうかもしれない。

でもそれは今じゃない。

だからそんな泣きそうな顔すんなよ、イヴァン。

[ 3/27 ]

[*prev] [next#]

[しおりを挟む]

戻る







「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -