ロシアンルーレット

うっ、と顔をしかめて咳き込む。ツーンとしたものが鼻や喉を刺激している。

「すみません、アーサーさん。わさびが多すぎましたね…大丈夫ですか?」

菊が背中をさすると、アーサーは大丈夫だと返事をしていれてあったお茶をぐいっと煽った。瞳は潤んでいたがそこまで辛いわけではない。わさびの味に慣れていなかっただけだ。

「やっぱり君が当たると思っていたよアーサー」

もう他にハズレが入っていないことがわかった途端に残りの寿司をパクパクと食べていたアルフレッドがこちらを向く。口の端に米粒がついている。菊が気づいて指摘するとアルフレッドはペロリとそれをなめとった。

「ぐっ、お前はのんきにぱくつきやがって」

ギリギリと音が出るほど歯ぎしりするアーサーをまぁまぁと菊がなだめる。

「それではお口直しに甘いものでも食べましょうか」

そう言って席をたって、奥から黒いものをとりだしてきた。アーサーとアルフレッドが恐る恐るスプーンですくって口に入れるとほんのりした甘さとゴマの風味が舌に広がった。

「これはゴマか」

「はい、お砂糖も使っていないのでヘルシーですよ」

「えっ、砂糖使ってないのかい!?」

アルフレッドはそう言って驚きながら、あっという間に全て平らげ一番早く皿を空にした。おかわりを要求すると菊は笑ってまだたくさんあると言う。

「アルフレッドの食欲に付き合わなくていいんだぞ、そんなに作っておかなくたって…」

「いいんですよアーサーさん。食べてもらえるのが嬉しくってつい作りすぎてしまったんです」

こんなに、嬉しそうに食べている姿を見ると自然と顔が綻びる。

たくさん作ってしまうのは人の笑顔を見たいからだと菊は実感した。





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