出会い頭

歩いていると、ふと誰かにぶつかって尻餅をつく。謝りながら差し出された手の先を辿って見上げるとキラキラとした綺麗な青がそこにあった。異人…と少し警戒したが彼の人懐っこい笑みで私の緊張はすぐに解ける。彼はあめりかという名前で日本には鯨と友達になりにきたらしい。大真面目な顔でそんなことを言うので思わず小さく笑ってしまった。そのことに対して気を悪くすることはなかったし、それどころか笑った顔を褒められて桜は赤面した。

転んだことでついた埃を払っていると突然ノー!と大げさに声が上がった。なにごとかと隣を見れば私の手のひらを見つめ口をぱくぱくと開閉させて青ざめている。

「血がでているじゃないか!」

「掠り傷ですから大丈…」

桜の言葉が終わらないうちにひょいと持ち上げられ抱き抱えられる。

「ちょ、ちょっとアメリカさん!」

「安心してくれ、君の怪我は俺の責任だ。今から手当てしにいこう」

強引に決めて、何を言ってもおろしてはくれない。どうしようと悩んでいるうちに見覚えのある建物にたどりついた。

「おや、アメリカさん」

菊さんが扉から顔を出して彼を見つめ、そのあとに抱き抱えられた桜を見て驚いた顔になった。

「一体どうしたんですか、桜さん」

「君達って知り合いだったのかい!?」

菊と桜を交互に見てアルフレッドも驚いている。

「あぁ、紹介がまだでしたね。私と同じ日本国ですよ」

アメリカがようやく桜をおろすと桜の怪我していない方の手を握った。握手だと気づいてぎこちなく振り返すとふわりと笑う。輝くような笑顔だ。

「桜っていうんだ、いい名前じゃないか。国だっていうんならこれからいろいろ関わりがあるだろうし改めてよろしくな!」

新しい出会いに胸がときめいたのはまだ彼には秘密のままだ。

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