あなたと影法師

「桜!遊びに来たんだぞ!」

「きゃああああああ」

ばちぃん、と音が響いてアルフレッドの頬に紅葉が出現する。ひりひりと痛む箇所をさすり、涙目になりながら前を見ると真っ赤になった桜が下着姿で睨み付けていた。

「あ…」

今度は別の意味で頬を染めていく。惚けているうちに桜はアルフレッドを部屋から押し出すとピシャリと襖を閉めた。

「桜、ごめんよ!着替え中だったなんて知らなかったんだ!」

「私だってアルフレッドさんが来るなんて一言も聞いていません…!」

ぽこぽこという擬音が聞こえてきそうだ。着替え姿を見られたことで普段の倍起こっているのか、口調も大人しい彼女にしては珍しく激しい。機嫌なおしにはなにがいいだろうか、考え込むとすぐに良さそうな案がひらめいた。

「桜、お詫びの印だ。見て欲しい」

返事はなかったが構わず障子に手を近づける。鳥を出現させ、大きくはばたかせると桜はふふっと笑った。

「影絵ですか」

以前いくつかできるようになったのを桜に見せそびれていたのでちょうどいい。この際全部見せてしまおう。ぱっぱっと切り替え、兎や鳥に象と形を変えていく。数種類出したところで記憶があやふやになり出すことができずに唸った。確か…と記憶を手繰り寄せているとゆっくりと障子が開かれる。困ったように笑う桜がそこに立っていた。服は着替え終わったらしい。

「こんなことで許してしまう私も私ですね」

「桜…!」

嬉しさのあまり抱きつくと、一瞬驚いた後に背中に手が添えられた。

「影絵のつづき、しましょうか」






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