マネッティア

ぽた、と血が落ちる。

一瞬何が起こったのかわからなかった。

「ひどいよギルベルトくん」

イヴァンはそう言って唇に手を当てた。

血の量はたいしたことはない。

けれど瞳にはみるみるうちに涙がたまった。

ぽた、とまたこぼれて赤と混ざりあう。

「もうそれやめろっていっただろ、お前が悪い」

唇についたイヴァンの血をふきとりながらギルベルトはいった。

「普通のことなのにどうして嫌がるの?」

声が震える。

拒絶されるのが悲しい。

嫌だ、怖くてたまらない。

つなぎとめておきたい、どこにもいかないでほしいくらい。

「俺の国では普通じゃねーよ、こんなの」

冷たい赤い瞳がイヴァンを睨んだ。

「普通だよ。だってプロイセンはロシアのものだからもうプロイセンの文化も記憶もどんどんその場からなくなっていくんじゃないかな」

「そんなことねぇよ…俺はまだここにいる」

うん、そうだよね。

まだここにいる。

それでもいつまで残っているのかわからない。

いつ消えるかわからないくらいなら。

新しく上書きしてしまえばいい。

消えないくらい強い修正を加えたいんだ。

「じゃあギルベルトくんをちょうだい」

「…ふぁっ?」

意味がわからない、という顔をする。

「プロイセンがロシアのものだとは君が認められないのなら代わりにギルベルトくんをもらうよ。」

彼を僕のものにしたい、そうすればきっと消えない。

「……わかった。俺をやる。でもプロイセンは俺の国だ、そこは変わらねぇ。完全にロシアにはならない、俺がまだここにいる限り。そこは譲歩しろよ」

「ロシアに譲歩なんてサービス、ないよ?」

ふふ、と笑う。

嬉しい。

今までずっと拒絶されてきたのに。

こんな簡単なことだったのだ。

国としてのプロイセン自身はロシアを認めない。

それでもギルベルト個人がイヴァンを受け入れてくれた。

それだけでもう十分だった。

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