微睡み

ソファーの上でだらしなく仰け反りながらギルベルトは考えていた。

自分の希望する土地にイヴァンと引っ越してきたのはいいものの、彼は首都で仕事をこなす。

無理して毎日帰らなくてもいいと言ってやったりもしたが、毎日ギルベルトくんの顔が見たいという。

せっかく二人きりで暮らせるんだからと、嬉しそうに笑うのだ。

それはギルベルトも同じ。

けれど、律儀に毎日帰ってくるとは思っていなかった。

家を決めたときも三日に一回程度で良いと話して、イヴァンは頷いていた。

自分だって会いたいが、無理はしてほしくない。

飛行機の中でも仮眠はとれるから大丈夫だよ、と優しく髪を撫でられる。

「帰ってきたらお前、襲うだろ」

手を振り払って起き上がると、イヴァンの不満そうな表情が見えた。

「睡眠時間短いとそのうち体調に影響するぜ」

普段もイヴァンは笑顔だが、今はその倍ニコニコとした顔に変化する。

「心配してくれてるんだ」

「してねぇ。ただ睡眠不足は俺の責任だからだ」

即座に否定する。

もちろん本当はイヴァンの言う通り心配していたのだが。

「ギルベルトくんで栄養補給するから大丈夫」

屈んで顔を近づけられた。

抵抗しない様子を見て、そのまま覆い被さり、ギルベルトはまたソファーに寝転がる形となる。

しかし、彼はソファーの上からすぐさま這い降りてしまった。

素早い。

ギルベルトはイヴァンの頬を引っ張ってべーっと舌を出し、自分の部屋に引き籠る。

慌てて後を追いかけて彼の部屋に入ると、すでにベッドの中で布団にくるまっていた。

「ギルベルトくん」

声をかけるが返事はない。

溜め息をつき、布団をめくると赤い目に睨まれた。

「今日こそちゃんと寝ろ、一人でおやすめ」

頭を振って拒否し、止めるのも聞かずに無理矢理布団に潜り込む。

「君がいるのに一人でなんて眠れないよ。お願い。ただ眠るだけでもいいから、ね?」

そう言って背中に抱きつくと、徐々に抵抗が緩くなっていく。

大人しくなったところで背中に顔を埋めるとぴく、と体が揺れた。

「なにもするなよ」

「してほしいの?」

ぺちんと頭をはたかれる。

ちょっと痛い。

それからは本当になにもしなかった。

ただ一緒に眠るだけ。

ふわふわと暖かくて気持ちよかった。

微睡む中、彼の寝顔が見える。

穏やかに寝息をたてている彼は騒がしい普段とは違い、ただただ美しかった。





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