所有欲

ガチャンと食器が音をたて、ギルベルトは思わずルートヴィッヒの威圧に縮こまった。

「ドイツを出てロシアに住む?理由を140字以内で簡潔に答えろ」

「俺様はあの小鳥じゃねぇ!あいつがロシアに来いって言うから…それに元々はドイツの、俺の領土だったんだぜ?」

「む、それはよく分かっているがしかし今はロシア領だろう。兄さんにはドイツにいてもらったほうが…」

「俺様飛び地やってんだからそこに住んだっておかしくねーだろ。今だってほとんどはあっちの仕事だ」

ホットケーキにメープルシロップを追加でたっぷりとかけ、暢気に頬張るギルベルトをルートヴィッヒは心配そうに見つめていた。

「兄さんとイヴァンはその…そ、そういう関係だというのは理解している。しかし、ロシアに行くのは危険ではないだろうか」

たとえ危険だとしてもイヴァンの言うことを聞いてやりたい、そしてギルベルト自身もイヴァンと一緒になりたかった。

答えようと、口を開いた。

その時だ。

ガチャリと音がして扉が開く。

風もないのにマフラーが揺らいでいた。

「ギルベルトくん、迎えに来たよ」

床を軋ませながら、イヴァンが部屋の中に入ってくる。

ルートヴィッヒは青ざめて口をパクパクさせた。

突然のことで言葉も出て来なかったのだろう。

まるで幽霊でも出たかのような反応だ。

「それじゃあ、ギルベルトくんは僕がもらっていくね」

座っているギルベルトの肩にぽんと手を置いてにっこり笑う。

許可など求めていない。

Jaと答える選択肢以外はその場に存在しなかった。

イヴァンが来たことに驚いたギルベルトが右手に持っていたフォークが床に落ちる。

「大丈夫だよ、とっても優しくするんだ、たくさん愛して、甘やかして。心配することなんて何もないよ」

言葉通りには受けとれないほど、不安要素しかない。

放心していたルートヴィッヒが我にかえり、口を開こうとするのをギルベルトは遮った。

「ヴェスト、今度は無理矢理連れていかれるんじゃない…自分から行くんだ」

椅子から立ち上がり、ルートヴィッヒの頭を撫でる。

髪が乱れ、毛がぱらりと額にかかった。

「離れたって俺達はドイツだからな」

「本当に大丈夫なのか」

笑顔で頷くギルベルトにルートヴィッヒはやっとほっとした表情になった。

「兄さん自身の意思なら、いいんだ」

頭の上にのった、ギルベルトの手をどかしながら笑う彼を見ながら、イヴァンはギルベルトの右腕を掴んだ。

「ルートヴィッヒくんの許可も貰えたんだし、もう行こうよ」

「えっ、行くのはもう少し先だろ」

「君のことだからもう荷物まとめてるよね」

まるで決めつけるような言い方だったが実際イヴァンのいうとおりだった。

すでに準備は整えられ、部屋に置いてある。

「ほら、とってきてよ。早く」

背中を押され、渋々荷物をとりにいく。

大きな荷物はルートヴィッヒに送ってもらう予定だったので荷物は最小限だった。

荷物を抱えて戻ると、ルートヴィッヒがコートと防寒具を用意してくれていた。

コートを羽織り、白いマフラーをぐるぐると巻き付ける。

その様子をニコニコと眺められた。

なんだよと言えばお揃いだね、なんてイヴァンは自身が身に付けているマフラーを指差す。

両方白だった。

もちろんギルベルトは白いマフラーをやめて赤いマフラーに変更する。

イヴァンは不満そうだったが。

手袋をつけると、荷物を肩にかけた。

「ドイツに何かあったらすぐ帰ってきてやるからな」

「あぁ、兄さん。気をつけて」

ドアにつけていたベルが鳴り、開閉を知らせるとギルベルトとイヴァンの影は遠くなっていく。

そうしてすぐに見えなくなっていった。

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