アスター

地図を指差してじっと様子を伺う。

相手は地図をいきなり取り出してきたことに目をぱちぱちと繰り返し瞬かせていた。

「ここに引っ越す」

トントンと机を叩き、場所を示した。

「え、だってそこは」

「あぁ、ロシアだ」

かつて彼はドイツ国内から離れるつもりはない、そういっていたはずだ。

矛盾している。

イヴァンの探るような視線を受け、ギルベルトは口を開く。

「ここなら俺の場所には違いない、お前のものになってやる」

考えてようやくだした彼の答えだった。

「ギルベルトくんらしいね」

くすくすと大きな身体を揺らしながら笑う。

「それで、物件は決めたの?僕は港の近くがいいなぁ。凍らないんだ。欲しくて欲しくて手にいれた」

「…そうだな。近くにするか」

新たに取り出した紙の束を捲りながらギルベルトは頷いた。

「海はあんま変わらねーな」

そう言って笑う。

その声はどこか寂しげだった。

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