ぎゅっと抱きしめて

部屋の中には大きなパンダのぬいぐるみが一つ。

イヴァンが一週間の旅行から帰ってきてまず最初に目に入ったのはそれだった。

一週間前にはなかったものだ。

「ギルベルトくん、これはなに」

「中国に行ったら願いが叶うパンダとか言われて買わされたんだよ」

息を思いっきり吸い込み、ギルベルトは頬を膨らませる。

まるで駄々をこねている子供みたいだ。

「また買ったの」

イヴァンは溜め息をつく。

目を離すとすぐにパンダ商法に引っかかっている。

そのうち家の中がパンダに侵略されるのではないだろうか。

「そんな大きなパンダをどうするの?」

「抱き枕にするんだよ」

「それは僕じゃ駄目なの?」

きょとんとしてギルベルトは小首を傾げる。

「僕が君の抱き枕になってあげるよ」

数拍遅れてギルベルトの頬がみるみるうちに朱に染まっていく。

そんな彼の様子を見ているとイヴァンはとても幸せな気持ちになるのだ。

大きく両手を広げるとギルベルトがひっ、と声をあげる。

「な、なんだよ」

「ほら、抱きしめてよ。僕は君のものだから」

生むを言わさぬ様子にギルベルトは恐る恐る手を伸ばしてイヴァンを抱きしめた。

ギルベルトの髪が頬に当たってイヴァンはくすぐったそうに笑う。

「ほら、もういいだろ。離れろよ」

ぐいぐいと押し退けようとするがイヴァンはより強く抱きしめる。

「ふぁっ」

「抱き心地はどうだった?」

「…俺様好み」

ぎゅっと、ギルベルトも抱きしめ返す。

いつまでも、ずっと。



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