気付けば雪見のベッドに寝ていた。
何となく身体を確認すると、自分のものじゃないシャツを着ていて、でもそれ以外は何もまとっていないみたいだった。
適当にされたのではなく、とにかくこれは気遣いなのだと咄嗟に理解した。
下着から何から全部世話をされた方が、私にとってはやりきれない。
こういう突き放した優しさをくれるのは、間違いなく、雪見だ。
腕も脚もこう奇麗に拭われてしまっては面倒を見てもらったことはすぐ分かるし、変わりはないというのに。
面白がる雷光を止めてくれる彼の姿が目に浮かぶ。
正直言って昨日は完全に恨んでいたけど、やっぱ雪見はいいやつだ。
意外と嗜虐心旺盛だけど、雷光には無いタイプのあったかさがある。
ああ、それにしても身体が怠いな。
腰は痛いし、お腹の奥がやたらめったらひりひりするから脚もろくに動かせない。
ついでにそこは違うだろって場所もひりひりしてるけど、深くは考えないことにしよう。
どっちがどうとか、この際もういい。
経験は二人一緒だ。
思い返しても、与えられた快楽も何も記憶に残ってはいなかった。
まる二人分、貪るように抱かれたなという認識だけある。
あと、痛みに泣きじゃくった私を見下ろした雷光が、やけに優しい顔をしていたなってことと、見知ったはずの雪見の肩幅が、覆いかぶさってくるとやけに広く見えて少し怖かったことは頭の片隅にある。
ああ、結局心行くまで相手をさせられたんだっけ。
気がねしなくていい分、おもいっきり好き放題やられたのだと思う。
くそ、都合良すぎる女じゃないか。
悔しい。
これじゃあ、うっかりとはいえ、二人だから良いんだなんて口走ってしまった私が馬鹿みたいだ。
普通に考えて、付け込まれたって思うのが当たり前だと思う。
恋人を作る時の女の最終判断、結構軽々他人と関係を持てる男性とは違って、出来るか出来ないか、選択はここで決まることが多いらしい、と言ったら身も蓋もないのだけれど。
怖くはあったけど、嫌じゃ……なかったな。
「……」
“嫌じゃない”が、“だから好きかも知れない”に変換されてしまうほど、私の頭が少女思考だったとは知らなかった……。
一線を越えても友人で居られる、なんて、経験してないから言えることだったのかもしれない。
ああまでして触れられて意識せずにいられるほど、私は乾いてもいなければ成熟もしていない。
あんなに嫌がっていたのに、今は私だけが囚われているみたいで。
悔しい。
溜息一つが震える。
「そういう隠れた涙は好きではないのだけれどね」
緩い動きで寝返りをうつと、すでにきっちり着こんだ雷光がマグカップ一つを手に部屋に入って来るところだった。
ドアのわきに雪見がよっかかっているのがわかったけれど、ベッドの横に置かれたごみ箱に、正方形のアルミが無造作に落とされているのが先に目について、顔を見る前に何となく布団に隠れてしまった。
無意識に数を数えた私は意外にずぶといけど、馬鹿だ。
多分あれだけじゃないなと思うと、まともに顔を向けられそうにない。
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