もうどうでもいいや。
しかし自分の貞操観念とやらを疑われないように、これだけは言っておかなければならない。
「あたし、別に、誰にでも身体を差し出すような軽い女なんかじゃないんだから…!」
あれ、力んで言ったわりにはこれ失言だって。
これじゃあ二人なら良いよって言ってるみたいじゃないか、そんなつもりなかったのに、おかしな話だ。
私の言葉に対し、耳元で二人に同時に「知ってる」って言われた。
ゾクってした。
「寿のような意地っ張りはね、私達に無理矢理組み敷かれるくらいがちょうどいいのだよ」
「お前には残念な話だが、最初から相性抜群だったってことだな」
胸元で雷光が、首筋で雪見が何か言葉を交わしているけど、何を言っているかはよく分からなかった。
腕が四本私に絡み付いて、いろんなところにいろんな感覚が与えられる。
「う…ぁ…っ」
口に指を突っ込まれたのと首筋をなぞられたのとおヘソをえぐられたのと脚の付け根を撫でられた熱が一緒くたに頭に上って来て、一気に理性がぶっ飛んだ。
反射的に雷光の背中に片腕を回し、雪見の腕に縋る。
まだ身体の中心には触れられてもいないのに、慣れない刺激は恐怖にも似た強さをもって、脳に、そして全身に押し寄せる。
雪見の指をくわえたまま、吐息とは程遠い悲鳴じみた声に二人の名前を無意識に交えて叫んだ。
苗字で呼ぶの白けるから止めろと雪見に言われたのを頭の片隅でどうにか理解して、何とか名前で呼べるようになった頃には、雪見もいちいち優しく返してくれるようになった。
雷光は、ふふ、とか、何だい、とか、この程度でそんなに喘いでいたら先がもたないでしょう、とか、意地の悪いことしか言って来ない。
性格が出てる。
丹念におヘソを舐めあげる雷光の行為が引き起こす変な熱と(初めてでも分かる、この行為は多分マニアックの部類に入るはずだ)、それとは別に、あの長い髪がお腹一面をくすぐって酷くつらい。
でも再び雪見に片手で拘束された腕は緩むこともなく、身体は上半身を軽くねじるどころか胸を浮かせることしか出来ない。
いつの間にかスカートと靴下以外、着ていた服は全部取り払われている。
するりと線を残すように太腿を上がって来た指は、入り口をくすぐるようにしてしばらく遊んでいたけれど、何を待てなくなったのか雷光はそれを止めると、中指と人差し指に、付け根にまでしっかり唾液を絡ませて、今度は躊躇いなく分け入って来た。
「や……っ!」
雷光の指を奥まで飲み込んだ遺物感にあげようとした声は雪見の口内に消えた。
本能的に逃げたがる腕は何度自由になってもまた雪見に捕まって、また同じ場所に囚われる。
思う存分よがれるだろ。
私は別に、背中に掻き傷を残してもらってもかまいませんけどね。
私が最後に理解した言葉だ。
何て事を言うんだこいつら。
ほとんどがおかしな快楽で占領された意識の中でそう悪態をつこうとし、その前に雷光の指にお腹を中から押し上げられて、結局嬌声に変わってしまった。
自分の鼻にかかった甘ったるい声が頭に響いたのをさかいに、私の記憶はほぼ完全に途切れた。
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