中学生の女子はムカつくぐらい夢見たやつばっかで、めちゃくちゃイケメンが自分のことを見つけてくれるとかなんとか言ってるやつもちらほら。そういうやつは大体黄瀬目当てでバスケしててもキャーキャーうるせぇし、そんなんだったら俺は夢のねぇおっぱい女で十分だと思っていたのが一年前。

中学二年の夏になって意見が変わったのは、夢見るぺちゃぱいに恋してしまったからだった。別に顔が好みとか体型が好みとか性格が好みとか、そんな理由じゃない。たまたま近所に住んでいた幼なじみのそいつを、つい意識してしまったのが始まりだった。そんなんだったら夢のあるさつきにしろよって話なんだけど、そう簡単に俺の本能は揺るがない。俺が直感で良いと感じた時点で、それは揺るぎない確信になる。


なんで良いと思ったかっていうと、一発の平手だった。きっぱり言っとくが俺はそういう趣味はねぇ。むしろ逆のが燃える。そんなことはどうでも良くて、その平手は俺の目を醒まさせるのには十分だった。涙目になりながら俺に、自惚れんな。一言言ったその感じが、全部、俺を惹き込んでいった。唖然としながらそうか、と言った俺に、そうよ、と笑う顔が、また確信させた。つまりは俺の求める女は体型でも性格でも顔でもなくて俺と一緒にバスケバカになってくれるやつだった訳で、それからは女として見てて罪悪感が沸き立ったりいろいろ大変だったがまああっちは気付く気配もないからこれからゆっくり落としてやろうと思いながら、俺は今日も階段を上がる。がチャリと音がすると同時に視界が開け、乙女丸だしなピンク色が目を刺激する。ベッドに横になってる姿はむぼーびだ。

『あ、青峰!また勝手に入って来たな!』
「おー、邪魔すんぞ」
『やだやだ入んなバカ』

そうやって拒否んのもわかってるから、下でおばちゃんに貰ったアイスを差し出せば、お腹がとか言いながら素直にサッとアイスだけを奪っていく。ついでにベッドに座るスペースを作る辺り現金なやつだ。

座ってアイスを頬張り今日も両親遅いのかとか、俺んちのはもう帰ってきてるとか、じゃあ何で来てんのよとか、日課だ日課と誤魔化してアイスを一気に食べ尽くしたり。色気のねぇ会話ばっかしながらなまえが必死に読んでるのは漫画だ。

「少女漫画ってんなに面白いのかよ」
『青峰に少女漫画とかいう単語似合わなーい。めっちゃ面白いよ、読んでみれば?』
「あー?」『私このシーン好きだなー。カレカノで部屋二人っきりになって男ばっかり慌ててたりするやつ』
「んー…」

差し出されたページを読むと確かにギャグ漫画みてぇな書かれ方のされた内容で結構面白い。続きが気になって一枚めくると急変してキスシーン。変わりすぎだろおい。
隣見てみたらアイスくわえたまま目だけ逸らしてやがった。どうせ恥ずかしくなったんだろう。

「なあ、なまえ」
『なに?』
「今の状況ってこういうのじゃねぇの?」
『え…は?』

バカみたいにぼけっとしてる口にかぶり付く。驚いて引っ込んでいく口を舐めて頭を左手で押さえ込む。舌まで入れてなまえの酸素を奪い尽くした。アイスのほんのりした味が負けるくらいなまえの口のが甘かった。

「…お前、冷てぇな」
『は、ぁ……ふう、』
「……」
『なんで、キスなんかすんのよ』
「うまそうだったから?」
『サイテー』

そう言って泣き出したなまえにまたキスをした。何度も何度もしてるうちに、なまえがほだされてくのがわかる。

「嘘に決まってんだろバカ。俺が興味もねぇのにこんな貧乳に手なんか出すかよ」
『言いながら揉むなばか!サイテー!しねっ』

真っ赤になって怒って暴れるじゃじゃ馬みたいなやつだけど、まあ胸は俺が育ててやるか。


夢見る乙女ですが

そんなやつでも幸せにしてやるよ。

END

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相互記念にFaulein管理人の佳乃様へ贈らせていただきます!
相互ありがとうございました(^ω^)
もちろん、佳乃様のみお持ち帰りOKです。

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