それは、雷のゴロゴロと鳴るとてもとても天気の悪い日でした。

徒歩、傘で来た私は、家に帰りあぐねていました。
そして、私は上京してきた高校生であり、独り暮らしなので迎えに来てくれる人も居ない。
さらに、所持金は五百円。タクシーの電話番号も知らない。雷が鳴っているだけなら、雨の中駆けていっても良いのだけど、不幸なことにさっき電柱に雷が落ちたから怖くて行けません。
さてどうしようかと立ち止まって五分。ぽんと方に何かが落ちた感覚に振り替えると、彼氏の手。見上げると、いつものつまらなそうなぼへっとした顔をしていた。

「なぁーに泣きべそかいてんだよ」
『帰れない…』
「はあ?」
『青峰、一晩泊めて…』
「ちょ、おまっ」

信じられないといった顔をする青峰。だがしかしここは譲れないのだ。私が今帰ると言うことは約三十分間歩き続けると言うことだ。つまり、所持金五百円の女子高生がダッシュで雷の中透けた下着を晒しながら走るという、まさに屈辱の行為なのである。

『ねえ、良いでしょ?一日くらい』
「何言ってんのかわかってんのか?」
『わかってる』
「……」
『青峰が手を出さなければいいだけ』
「…帰れ」
『…青峰、おねがいだから』
「絶対嫌だ」

ピシャリと言い切った青峰はそのまま傘もささずに走って寮の方向へ去っていく。それを追いかけたら帰れとかすごくなんか叫ばれて、まあ帰るはずもなく結局青峰の部屋の前まで着いていけば、私の服が透けてたりとか私が濡れてて可哀想だとか罪悪感が働いたのか観念した様に扉を開けて招いてくれた。青峰はやっぱり優しいな。


「言っとくけどな、泊めねぇぞ」
『はーい』
「これで勝手に拭いてろ」
『ありがとう』
「…あとTシャツ」
『おっきいなー青峰のTシャツ』

ばさばさと大きさを確認して、それからタオルで丁寧に体を拭いた。といっても、最初は服越しに拭いていた。残念ながら寮住まいの青峰には一部屋しかないので、途中で青峰が怒りながらお風呂場に引っ込んで行ったため、服を脱いで拭いた。大分濡れていた制服は結構な重さになっていたようで、Tシャツに着替えると身軽になった。因みに下は体操服。


『青峰ーごはんつくってあげようか?』
「要らねーよ、寮で食う」
『じゃあお菓子でいいや』

青峰の部屋を物色、発見した堀北マイの写真集と共にお菓子を引きずり出して食べながら読む。途中で青峰に取られた。

「お前な、いい加減にしろよ」
『私普通だったじゃない』
「何でノーブラなんだよ」
『だって隅々まで濡れたから』
「ふざけんなよ」
『…ごめんごめん』

どうどう、と手をつき出してポーズを取りながら外を見る。まだまだどしゃ降りだけど、雷は収まっていた。よし、これなら…と、お風呂場を借りてまたびちゃびちゃの服に着替える。

『じゃ、ありがとね。Tシャツ洗濯して返す』
「おい」
『またあした』

バイバイと手短に挨拶をして、そこからは猛ダッシュ。まさかあんなに拒否されるなんて思わなかったから、もう少しで泣きそうだったなんて言えないし、まあどうせ収まったら帰れって言われてたから良かったかな。バシャバシャと駆ける音は一つしかない。車も少ない。やっぱり雨が酷いんだ、ちょっと道路に水たまってる。青峰め、こんな中帰しやがって。不意に体が後ろに傾いた。というか引っ張られた。


「止まれって言ってんだろ!」
『…何よ』
「泣いてんじゃねぇよ面倒くせぇな…戻るぞ」
『え、ここまで来たら家帰るし!』
「じゃあ俺も泊めろ」
『何でよ!ここからならまだ近いでしょ!』
「うっせぇな…」

イライラとした表情の青峰が困ったときにする様に頭をかいた。

「お前が泣くからだろ…何で泣いてんだよ」
『…青峰が冷たいから』
「お前が手ぇ出すなって言うからだろ」
『手を出さないのは普通なの!』
「誘ってたくせに」
『誘ってないし!』
「ハイハイ」


自然と私たちは家に向かっていて、泣きそうに不機嫌だった私も、怒っていた青峰もちゃんと笑っていた。びちゃびちゃに濡れながら帰るのも、結構良いと思う。


大雨警報

END

*****
奈々様リクエスト“青峰夢”
お話はお任せということで、気分に乗せてさらっと書いてしまいました。ちょっと会話が下品かも知れません。ごめんなさい(´・ω・`)
また通っていただけるということで、私も更新頑張ります!
リクエストありがとうございました!

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -