猫が一匹通って行ったのを見ていた私は、今とても暑い外で彼氏の迎えを待っていた。

彼氏が、私の帰りが遅いことを知って、迎えに来るって言ったから、私はこんなところで待っているのに、彼氏は一向に来る気配がなかった。暑くて暑くて、暑いの苦手な私は汗を流しながらずっと空を見て時間が過ぎるのを待ってる。本当は七時だったからあんまり危なくもなかったのに、彼氏を待って一時間、空は茜色を追いやって夜色へと移り変わってしまった。こうなると、明かりのあるところじゃないと怖い。

一時間も待ったしもうタクシー引っ付かんで帰ろうと思ったら、さっきの猫がやって来た。薄汚れて毛並みもあまり良くないその子は何だかこちらをじっと見て鳴いている。お腹が空いたの?ごめんね、あげるものないんだ。と、頭を軽く撫でるつもりだったのに、首に着いていた以前飼われていた証が私の目に付いて、撫でれなくなってしまった。

近くのコンビニで食べやすそうなパンと牛乳を買った。私の分と猫ちゃんの分。もう一つおまけして。猫ちゃんの前にしゃがんでパンをちぎり差し出す。警戒する猫ちゃんは、鼻をふんふんとひくつかせて食べれるものかを確認した。大丈夫、お食べ、とまた手を差し出すと、かぷり。これは結構ハマるかも…と可愛さに悶えていたら、また鳴いた。おかわりですね、わかりました。


多分この猫は捨てられてしまったんだろう。首輪の金具部分にはきちんとプレートが付けられていた後があるのに、今ではその部分が無いのだから。可哀想に、可哀想に。労る振りをしながら今の自分と重ねている部分があるから人間ってズルいよね。パンを食べ終わった猫ちゃんに牛乳を飲ませた。自分の手が汚れることを気にしない私みたいに、地面に滴った牛乳まで猫ちゃんはキレイに舐め取ってしまった。

近くの水道で手を洗って、猫の元に戻った。猫は全く動くことなく座っていて、もしかして私の隣で忠犬ハチ公でもするのか、と見ていたけど、どうやら眠たいらしい。お腹をよしよしと撫でながら動物の暖かさに和んだ。遠くから、声が聞こえてやっと私はその行為から解放された。


『大輝遅いっ』
「うお!いきなり飛び付くなよ!」
『…あっつい』
「じゃあさっさと帰るぞ」
『どうせ堀北マイの雑誌読み耽った上に寄り道して挙げ句場所忘れたくせに』
「ご名答」
『謝れバカ』

ケンカの始まりそうな空気を制したのは猫の一鳴きだった。振り返って抱き上げる。家で飼おうって、会ったときに決心していたから。抱えてまた大輝を振り返った。

「おい、なまえ」
『なに?』
「これ見ろ」

大輝が指差す方向には掲示板。そこに掲示してあったのは猫の写真と探していますの文字。私はたまらなくて、猫を抱き締めた。良かったね、良かったね、返事をするように猫は鳴いた。

「なに猫になついてんだよ」
『同類愛護』
「は?」
『私と猫ちゃんは似てたの』
「…俺は逃がさねえよ」
『ふふ』


とりあえず連絡して、飼い主に引き渡した。


おんなじこ

END

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はなはなまろん様リクエストの“青峰くん”です。
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