『…おはようございます』
「おう、おはよう。眠そうだなー」
『そうじゃなくて眠いんです』
「夜更かし?隈は無いみたいだけど…」
「どうせゲームでもしてたんだろ」
「ゲーム…ゲーム……」
「何もないなら喋んな」

寝たら夢が始まるようになってから、微妙に寝不足になった私は、夢の中でも寝不足でした。ついでにマネージャーとして朝練を覗きに行ったら先輩達からの言葉が一斉に押し寄せてくる。上から木吉先輩、リコ先輩、日向先輩、伊月先輩、日向先輩。とりあえずみんなの言葉はスルーして、リコ先輩にだけ大丈夫ですと言って、朝御飯であるミカンゼリーを袋から取り出した。ミカンゼリーと言っても結構なボリュームだ。

「おはようございます」
『黒子くんおはようー』
「はよ」
『かがみんおはよう』
「かがみん止めろバカ」

もしゃもしゃ咀嚼しながら次々来る一年勢に挨拶をする。 みんな朝は眠いのか少しぼうっとした印象で、それを正すようにリコ先輩がパンパンッと大きく手を鳴らした。

「朝の練習一回説明するから集まって。みなとちゃんはボール出してくれないかな?あとカラーコーン」
『ふぁいー』
「口のもの食べてからね。…それと、昨日日向くんと一度練習メニュー練り直してみたからそっちも相談してみたいの」
「一応個人のも一回見直す必要があるからな」


リコ先輩、日向先輩の説明をみんな真剣に聞き入って体育館には私が押すかごの音が響いて耳が痛かった。こういう夢の中、黒子たちに会えるのは嬉しかった。でも、全くのバスケミーハーでもあり、バスケが好きになったのだって理由が不純だし、私ではあの中に入ることは出来ない。
ボールかごをみんなが動くであろう範囲の全員に支障が出ない位置に置き、その隣にカラーコーンを置く。みんなから少し離れた位置に置いていたミカンゼリーを拾い上げ、その場所で静かにまた食べた。


「…如月」
『ん?何ですか木吉先輩』
「……」
『……?』

何時にもなく言葉を探すような仕草をする木吉先輩を見上げていると、ちょっとと言って手首を引っ張られる。体育館にシューズのきゅっきゅっという高い音が響いた。

「お前もここだろ」
『おうっふ』

引っ張られた手が急激に下に下がって膝から落ちる。ゴツっと音がして冷たい床の感触が伝わってきた。痛いと抗議するために目線を上げると、丁度日向先輩と木吉先輩に挟まれていて、みんながこっちを見ていた。

『木吉先輩、あの、私』
「聞いてもわかんないとか言うんじゃねえぞ」
『……』
「わからなくても、流れを知ることは大事だぞ」
「それに、みんなと顔合わせてる方が団結してるって感じだろ?」
『じゃあ、聞きますけども…出来れば一年の方に』
「……何でだ?」
「そんな真剣な顔で言うなバカ!当然だろ!!」
「当たり前だのクラッカー!」
「いや意味わかんねえし」


何だか連れられた円の中は外から見るより全然賑やかで、今まで交ざれなかったのが勿体ないくらいだった。じゃあ失礼しますとミカンゼリーをまた口に運び出した私を見て、日向先輩は頭を叩いた。


許容範囲

END

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