赤司くんの眼がとっても可愛い。


皇帝の怒らせ方


気が付いたらすごく覗き込まれていた。

「おい、聞いているのか?」
『あ、いや、ごめんなんだっけ?』
「…全く」

呆れたように腕を組んで溜め息を吐いた赤司。感覚的に今は放課後なんだろう。場所は廊下で、身体の向かっている場所は多分、体育館。

「今日お前にやってもらうことは何もないと言っているんだ。とりあえず、部員の体調に変化がないかだけ見ていてくれ」
『…それ赤司がやった方が効率いいんじゃない?』
「いや、僕には僕のトレーニングがあるから、さらに個人の管理は正直きつい」
『赤司様が弱音ですか』

ちょっとした嫌味を言ってみても赤司は乗っては来ない。だから君を頼っているんだよ、みなとと逆に乗せられてしまった。個人の管理と言っても、私にはわかりもしないのだけど仕方無い、少しだけでも努力をしようと気合いを入れる。

立場的に、私は部活のマネージャー兼監督ポジションの様で。まあ監督とは名ばかりみたいなものなんだけど、意見を出すことは出来るらしい。赤司の言うことは絶対と言っても、個人からの要望も、ましてや向上心を無下にするのは良くないということで、そういう意見を扱うのが私の立場らしい。
なぜ個人の意見を一々私に通すのかと言うと、やはり言い出せないという部員も居るだろうという配慮、そしてもし却下されたときに部員が暴力で行使しようということを防ぐためだ。バスケの不満は本人に言わなければ意味がない、本人に直接会うまでに間を設けて少しでも冷静にすることが狙い、とこういう訳だそうだ。

まあそんな意見など到底出ないのが、赤司様の力量なのだろう。難しいことはさておき、とりあえず客観的に個人の体調確認。全く健康体にしか見えないし歩き方とかにも違和感ないしどっか気にかけてる様子もないし大丈夫だろう。一応もらった紙に異常なしとだけ書き込んでそのまま出しておこう。立ち上がったら何かが降ってきた。

ドゴッという鈍い音がして、頭に痛みが来る。微妙に下を向いていた私の頭は完全に下を向いた。周りが静まり返っていて、さっきまでの練習するバッシュの音はしない。そして頭の痛みはどんどん強くなる。

『…誰だよ』
「みなとちゃん大丈夫!?ちょ、謝りなさいよこのゴリラ!!!」「悪い」
「すっげー音したな!如月石頭なんじゃね?」
「葉山は喋んないで!!」

多分実渕は泣く私を想像したんだろう、背中を擦り頭を撫で女子の如く私を気遣いだした。対応は女としては申し分ない(女じゃないけど)
だけど私はそんな可愛いやつじゃない。

『ゴリラそこに直れ今すぐはやくさっさと』
「え、」
『さっさと座れって言ってんのがわかんないの?一回殴るだけだからそこ座れ黙って』
「ちょ、暴力は…て言うかゴリラも素直に座ってんじゃないわよ!」
「あ」

手の甲に痛みが来るのと同時にゴリラが小さく呻くのが聞こえた。葉山も実渕も驚いた顔をして焦る。まだ顔を殴らないだけましだろう、と思った私がゴリラを見下ろした時、ゴリラの表情を見て私は私が犯した過ちを悟った。

「みなと、何をしているんだい?」
『あかしくんじゃあないですかぁ………きゅうけいですかぁ?』
「質問に答えろ、何をしていた?」

まともに喋れない私の声は本当に拙いもので、赤司の表情は無くて、本気でゴリラを呪うことにした。私が涙目で作り笑顔を延々披露していると、赤司が冷たい声で言う。

「その前髪、邪魔だろう?切ってあげるよ」


その日私の部屋に悲鳴が響いた。


END

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -