ぱちっと目が覚める感覚。目の前には大きく口を開ける生命体。私の手には棒つきの飴。が、食された。


「ぼーっほしへる」
『あ?』
「…ぼーっとしてるねみなとちん」
『あー、うん、そだね』
「眠いなら寝る?」
『そだねー…』

状況を整理すると只今学校に居る模様。なのに周りが結構静かなのは何故かというと授業中だからです。後ろを振り向いてる紫原が、普通に話し掛けてくるものだから気付かなかった。そして教師がこっちをガン見してるのがとても怖い。

『ほら前向いて、飴食べたんだから』
「やだしー」
『ちょ、教師めっちゃ睨んでるんだからはやく』
「だって俺国語苦手だしー」
『知らんわ』

ぺしっとおでこを叩くと仕方なくのそのそ前を向く姿はとても二メートルある人とは思えない可愛らしさで癒されていたけど、黒板の前で紫原が怖くて私を目の敵にした教師が睨んでいる。私のせいじゃないんですけども。

授業が退屈すぎて、私はそのまま眠りにつく。というか眠りにつくと同時に目覚める。かなりまだ眠い現実世界の時間はまだ三時で、もう一度寝れる時間だ。もう一回寝たらまた紫原に会えるかも知れない。でも、最近私はこんな都合のいい夢の見方するかと結構怪しんでる。漫画の読みすぎとか言われそうだけどまあ誰かがそういう薬作ってて実験台になってたりとかそういう装置とかがあったりとかでこんな幸せな目にあってるのかも知れない。よくわかんないけど幸せなら良いじゃん、寝よう。


二度寝の先に見たのは片目を髪で隠した泣きボクロ。とっても覗き込まれていた。

「敦、みなとちゃん起きたよ」
「ほんと〜?」
「大丈夫そうだよ」
「よかったー」

べらべら喋りだした二人の様子からなんか心配されていたみたいだけど、私はというとなんだか後頭部がズキズキ痛んで、横になっている状態から起き上がれない。周りを見ると白い壁に薄い水色のカーテン、寝ている場所はベッド。保健室っぽい。

『ねえ』
「ん?」
『私何かあったの?』
「…覚えてない?」
「じゃあ思い出さなくてもいいよ」
「敦…」
『私に何かしたの?紫原』
「うーん」
「敦がみなとちゃんに気付かなくてね、そのままぶつかって倒れた拍子に頭を…それと敦に潰されて」
『うわ、悲惨』

想像したら軽くぷちって鳴りそうだとか思いながら、紫原がごめんね〜と言っているのをお菓子くれたら許してあげると返答して困らせる。今日の分これだけしかないのに〜と、腕の中に収まるお菓子の数々を見せびらかせた。十分すぎる量なので飴玉一つ奪った。

『部活は終わったんだよね?』
「んー」
「いや、終わってないよ」
『え?』
「心配すぎて室ちん練習出来なかったもんねー」
「敦もずっと落ち込んでたからな」
「室ちん〜」
『はやく部活戻れよ』
「えー」
『いや、はやく戻らないとヤバイでしょ』

言い終わったタイミングで保健室のドアが勢い良く開けられる音がした。見れば般若がそこに立っていた。性格に言えばまさこちゃん。

「保健室運んだらさっさと戻れって言わなかったか!?」
「まさこちん、みなとちん起きたよ〜」
「敦、行くぞ」
「起きたならなおさら戻れよ」

まさこちゃんにしばかれる前に自分達から戻っていった二人を見送った後、私はまた眠りについた。


痛い思いも悪くない

END

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