とってもすごい雨を目覚めてすぐに見た。記憶からすると、雨が弱まるのを待って寝ていたらしい私。時間的に部活が終わった後だろうか。とりあえずこんなタイミングの夢なんか見たくない。

『なんで傘持ってないのかなぁ』
「本当にわからないのだよ」
『……』
「昨日から雨だと天気予報で言っていただろう」
『緑マッチ様傘に入れてください』
「断る」


バッサリと私を振ったのは長身学ラン眼鏡さん。これじゃあコスプレに間違われないか心配な彼は、さっさと傘をさして行こうとするので全力で引き止める。振り返った顔はとても怒っていて、まあそれでも傘を提供してくれるまで離さない。

『緑間の家の近くまで行ったら出るから』
「お前の家は俺の家と近いのか?」
『わかんない』
「……」
『まあ緑間の家からこの傘を借りて帰るという手もあるから!』
「傘を買え」

すっかりご機嫌ななめな緑間の提案にそっかそっかと言いながら財布の中身を確認したら、五円しかない。しかも全て一円玉だ、地味に嫌だ。

『緑間くんと今日は帰りたいなー』
「媚を売るな気持ちが悪いのだよ!」
『えー…まあ入れてくれるなら普通に戻るよ。はやく入れてください』
「お前と話していると無性にムカツクのだよ」
『へー、感情豊かなのは良いことだ。カルシウム足りないんじゃない?』
「置いていく」
『ごめんなさい』


泣きついて謝り続けて勝ち取った私の雨避け物件は相当条件の悪いものでした。一応私のこともちゃんと気にかけてくれた緑間の優しさ虚しく風で左肩に雨が直撃していた。ついでに傘から身体が離れすぎていて足もびちゃびちゃ。見上げてみると緑間の右肩もびちゃびちゃ。ワガママなのになんで気遣いだけは出来るのか不思議だ。

『緑間って不思議ちゃんだねー』
「……」
『おは朝とかじゃないよ?』
「……」
『見た目と言動に反して優しいというか』
「……」
『ギャップ萌え?』
「黙れ」
『ギャップ萌えだ!緑間ギャップ萌え狙ってるの?』
「違う!どうしてそうなるのだよ!」
『いやだって狙ってるっぽいから』
「断じて違う!」

しばらくからかいながら歩いていたら、緑間が立ち止まる。急だったから普通に傘から出ちゃったんだけど。振り返ると緑間が横を見てて、私も同じ方向を見るとマンションがある。あれ、ここってもしかすると。

『私の家だー』
「さっさと入るのだよ」
『へーい!ありがとうやっぱ緑間優しいわ』
「たまたまなのだよ」
『ありがとうツンデレ間!ばいばい!』

わーわーと後ろで騒がれながらマンションに引っ込む。マンションの窓から緑間を見下ろしていたら、今まで進んできた道を引き返す傘が見える。本当にツンデレなんだな、とか思いながら、次に夢に出てきたらおしるこおごってあげようと思った。雨は小雨になっていた。


雨でも嬉しい

END

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