大きい貴方が見る世界は私とは違うのな。


遠いよ、遠い


私と幼馴染みだった大輝はどんどん伸びていく。身長も、バスケの上手さも、ぐんぐんぐんぐん伸びていく。
私は小さい頃からバスケをやっているのに、どんくさいから全然成長しない。中学三年の頃には身長も止まってしまった。

そんなのお構い無しに大輝は伸びていく。成長を加速させていた。私を置いていく気なのか、大輝はいつの間にか、私にあんまり関わらなくなっていた。


バスケが上手いのも、身長が高いのも羨ましかった。
だけど大輝はそう言って何もしない人が大嫌いだったから、だから私は努力する。バスケだって辞めないし、身長だって諦めない。牛乳ずっと飲んでるもん。


だけど、そうやって背中ばっかり追い掛けてたからかな。
何であんな言葉言ったの、大輝。

「お前、バスケ辞めろよ」


何でそんなに冷たくなったの。

「何でこっちのコート見てんだよ」


いつの間に
『木下」


私を名字で呼ぶようになった?


私今辛いのかな。何か目から水ばっかり出てくる。何でこんなに遠いのかなあ。


何で私はこんなに小さいのかなあ。


「…おい、」

幻聴が聞こえてくるぐらい恋しいのかな。


「何で、泣いてんだよ」


もう私疲れたんだけどな、でも離れたくないの。


「……泣き止めよ…」

『…………………………………だいき…?』

「泣き虫、泣き止めよ。お前が泣いてたら、どうしてやればいいか…わかんねえんだよ……」

どうしたらいいの。喉から手が出るくらい欲しい存在が目の前にあるの。手を伸ばせば届くけど、臆病者な私に掴めるかな。


「ほら、泣き止め」
『う、だ…だいきぃ……』
「誰かにいじめられたのか?コケたのか?」
『ばかああああ』
「悪い悪い、冗談だから、ほら、落ち着け」


抱っこみたいに簡単に抱き寄せて、背中をぽんぽん叩いてくれるキミは、きっと私の事なんか意識しないのね。

でもいいよ、幼馴染みってだけで、あんなにすごいキミを一瞬でも独り占め出来るのなら、


私はそこにしがみついてやるの。


END



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