布団の中でうとうとしてたら、なんでか知らないけど青峰くんと一緒に眠ったら気持ちいいだろうなって思ったの。それで、なんでかわからないけど身体がほてっちゃって、恥ずかしいに似た感情が沸き出てきたの。
これが恋なんだなって思ったんだけど、勘違いじゃなきゃいいな。

と本心をつらつら口にして見せると、女友達は大抵笑顔で恋ばなだーと喜ぶふりをして可愛い子ぶってんじゃないよとか天然気取りかとか、そういった真っ黒い部分をひた隠します。私はそういう顔も理解して(陰口やいじめで散々理解させられて)いたので最近では全くそういう感じのしゃべり方をしなくなった。というか自分の話はしなくなった。だから、青峰くんとお喋りをしても相づちや質問に返事を返すぐらいで、同じ空間に居るだけみたいで、寂しいような気もしたけど普通の女子ってこういう感じだよね?内気で居れば嫌われないかな。青峰くんには嫌われたくないからなあ。

屋上は彼のテリトリーらしくて、だから初めて屋上で会ったときはヤンキーがここを拠点にしてるんだと思って目が合った瞬間に扉を閉めてしまったっけ。彼は気にしない性格なので、なんだあいつ、くらいにしか思っていなかったらしいけど。私は心臓がバクバク言ってて喉までせり上がるかと思った。ヤンキー、こわい。


「おう、まい、こっちだ」
『うん』


フェンスに寄りかかって空を見上げていた青峰くんが、音に反応して片手を上げた。こっちを見ていないから私だという確認はしていないのに、先生とかだったら相当恥ずかしいだろうな。呼ばれた青峰くんの隣に、小さく座る。

「お前最近頻繁に来るようになったな」
『そうかな』
「二週間に一回来るか来ないかくらいだったのに、週三くらいになってんだろ」
『んー』
「そんなに俺と話すのが楽しいかよ」
『うん』

犬を可愛がるみたいにくしゃっと頭を乱暴に撫でられた。照れてるんだと思ったのに、正直に嬉しいと顔で語っていた。彼の屈託ない笑顔は眩しい。黒いけど輝いて見える。だからよくわからないけど私もつられてはにかむ。彼の笑顔が見れる日は幸せだ。
彼の良いところを伝えたい。共有したい。でも独占したい。私が彼と一緒に居ることを、誰かに認められたい。認識されたい。二人って仲良いよね、もしかして恋人なのかな、なんて言われてみたりもしたい。でも二人きりでこうやって話してるのは邪魔されたくない。


「お前って自分のこと喋らねえよな」
『そうでもないよ』
「俺はお前のこと何も知らねえ」
『そうなの?』
「誕生日とか、趣味とか、好きなもんとか、スリーサイズとか」
『セクハラダメ絶対』
「ちっせえけどな」
『のー!』

怒りのチョップをお見舞いしても、へっと鼻で笑う彼。誕生日、私も青峰くんの誕生日知らないよ。だけど好きなものと趣味は知ってる。どっちもバスケだ。私は知ってるけど彼は知らない。私が話さないから。

だって嫌なやつだってバレそうだから嫌だ。嫌われたくない。すごく好きだってバレて、あんなによくわからない欲とかがあるってバレるのはすごくすごくこわい。周りの女の子から陰口やいじめを受けるよりずっとこわい。

『いつか教えてあげるね』
「誕生日プレゼントとかはやらねえからな」
『教える意味ない』
「まあ、気が向いたらアメでもやるよ」
『……』
「うまい棒」
『チェンジ』

いつかって多分すぐには来ないけど、出来ればその時には、素直に打ち明けれてればいいな。そう思って空を見上げると、青峰くんが珍しく柔らかく頭を撫でてくれたの。


嫌なおんな

嫌わないで、嫌わないで。と必死にへつらってる。やなやつなの

END




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