へらへらと笑って
みんなを仲間を安心させて
そんな日常に疲れちゃって
悪循環でしかないその流れに
ずっと浸かっていろなんて
そんなこと私は言わない
そんな残酷なこと言えない

だって逃げ道がないと潰れちゃうじゃない

だから私が避難場所
あの人が何も考えなくて良いように
ただぐっすりと眠れるように
それだけが私の存在意義


「…よお」
『また来たのね、大輝』
「まあな」
『寝に来たの?』
「おう」

屋上の扉を開ける人は限られている。原則屋上に出ることは許されていないし屋上に続く階段には立ち入り禁止と書かれた看板が立てられていて、だからここは私が入り浸るところだし来客は数人くらいなもので、面識があるのも大輝だけ。部活が行われているこの時間、帰りもせずわざわざここに来るのは大輝だけだった。何故帰らないのか、何故参加しないのか。それは複雑な心理状況が行動に表れているもので、保健の授業でやった記憶を辿るに接近回避型というやつだ。ちゃんとした名称は忘れたが、バスケはちゃんとしたいがライバルとの差が大いに開いてしまうのは避けたい、そんな気持ちがこの遠くも近くもない場所に足を運ばせてしまうことは理解できた。だから結局私は逃げ場所。


『大輝、おいで』
「……」
『抱き締めててあげるから眠りなよ』
「悪ぃ」
『おっきな子供だもんね』

よしよし。髪を撫でると目を瞑って私に体重を預けてくる大輝。重さに押されて屋上に寝転ぶ。不思議と大輝が一緒に眠るとあまり寝心地の悪さは気にならないのだ。
それに比べて大輝の顔は随分暗いのだけれど、私は笑顔にさせるなんて芸当は持ち合わせていないのだ。
もし、彼がバスケを楽しめるだけのライバルになれたなら。
もし、ライバルを育て上げるだけの力量があったなら。
もし、彼ほどの才能があったなら。
もし、彼の気持ちを私が引き受けれたなら。

吐露するのは無駄であり彼を不快にするしかないのでちゃんと閉まってある気持ちが、今日も彼の苦しみを感じて膨れ上がる。彼は眠っているときが一番安らいでいる。今は起こさないように抱き締めていることしか出来ないけど、いつか、彼から自分の試合を見に来るか、と尋ねてくれたら嬉しいのだけれど。


END



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -