僕は何だか変な人に好かれる体質があるのかも知れません。その例がこの二人。

「くーろこっち!」
『くーろこちゃ〜んっ』
「こんにちは黄瀬くんとまいさん」
『あーん呼び捨てでいいのに!』
「丁寧にお断りしますね」

黄瀬くんとその妹のまいさんだ。
この二人は一見普通の高校生と中学生だが、立派なモデルで人気もとても高い。街を歩いていると人が寄ってきて歩けなくなるくらいの認知度で、一緒に歩きたくないくらいには厄介である。二人と出会ったのは中学の頃だが、こうして高校に進学しても話しかけてくる。特に用事とかはないらしい。右側に黄瀬くん左側にまいさんが陣取るように腕を掴んだ。

『黒子ちゃん帰りだったの?マジバでも寄る?』
「いえ、正直あなた方とはあまり行きたくないですね」
「ひどいっスよ黒子っちー!そんなに冷たくあしらわないで欲しいっス〜」
『涼太が女の子に愛想振り撒くから悪いんだ!』
「まいだってそうだろ!」
「ストップ。ケンカするなら離れてしてください」
『「ヤダ〜!!」』

こんなやり取りも会えば絶対と言っていいほど繰り返してきた。間の僕は周りにはあまり見えてないからきっと二人が仲良くケンカしているようにしか見えてないんだろう。

『ねえねえ黒子ちゃん、今度こっそり二人だけでデートしようね。私変装するからさあ』
「そうですね、静かな所なら付き合いますよ」
『やったー!じゃあ黒子ちゃんの好きな猫カフェとか行く?』
「まいばっかりずるいっス〜!何で二人で出掛けようとするんスか!俺も連れてってよ!」
「君は変装しても変装しきれてないので嫌です」
『私もやだー』

さっきはああ言ったけどそのまま帰るのも何だか申し訳無かったのでマジバに寄ることになった。僕が席に着くと二人でどちらが隣に座るかケンカをし出したので二人とも向かい側に座ってもらうとまいさんはむっつりと拗ねてしまった。その機嫌を取るために黄瀬くんがメニューを聞いて注文することになり、今は二人だけだ。

「…あの、まいさん」
『何?』
「まいさんは何で僕に構ってくれるんですか?モデルのお仕事も大変でしょう」
『そーいうのは関係無いの、黒子ちゃん大好きだもん』
「はあ…」
『いまいち黒子ちゃんは自分の価値に気付いてないよね』
「いや、僕は普通ですから」
「黒子っちはすごいっスよ!」
『……』
「……」
「何スかその間」

三人分のマジバを持った黄瀬くんが席に着く。まいさんは自分の言葉を遮られてじと目で黄瀬くんを睨む。仲のいい兄妹だなあ、なんてバニラシェイクを飲む。

『何で私と黒子ちゃんの仲を邪魔すんの?』
「逆じゃないっスか!俺と黒子っちの邪魔をしてんのはまいっスよ」
『……帰る』
「まいさん、まだ残ってますし…」
『良いよ涼太が食べるし。じゃあね黒子ちゃん』
「あ、」
「気を付けて帰るんスよ!」
「…黄瀬くん、僕も後追いますのでこれで」
「え!?ちょ、黒子っちー!」

出ていったまいさんを追いかけて店の外に出たものの、まいさんは外に出るなり駆け出していた。全く本当、面倒な人に好かれてしまった。だけどとても放っておく気にはなれなかった。だってあの人は、僕を魅力的だと言ってくれる数少ない人の一人だから。仕方がない、僕だってそんなことを言われてしまったら舞い上がってしまう。

「…っまいさん!」
『黒子ちゃん……』
「やっと、追い付きました」
『走って、追いかけて、くれたの?』
「はい」
『ありがとう…やっぱり黒子ちゃん、大好き』

さっきまで逃げるように走っていたのに今は僕に抱きついてくるこの人は、僕が男だと理解しているのか。少し呆れながらも背中に腕を回してしまうあたり、僕も満更ではないのかも知れない。


まだ恋とは呼べない

淡い気持ち。

END



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テーマ「人外ファンタジー」
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