俺なんかよりどうしようもなくダメなやつがずっと腐れ縁というやつで付いてくる。こいついつかニートになるんじゃねぇのか、密かに俺は予測した。


ダメダメな女


アメリカにも一緒に行ったくらい俺たちの腐れ縁は強かった。お互い示しあわせたように同じところばかり行くことになっていて、そうして自然と一緒に居ることも多くなり、そして高校に進学するときにまいの親に言われてしまった。


「この子一人じゃ何にも出来ないから心配で〜。大我くんが居れば安心なのよー」

親御さんにも了承してもらったからよろしくね〜。間延びしたまいの母ちゃんの声がどんどん遠くなって、代わりに残されたのは何も出来ない幼馴染み。一緒に住めっていうことらしく、了承を得たっつーことは俺の親もまいの親も万が一変なことが起きてもむしろ大歓迎なんだろう。まい相手にそんな気が起きるわけねえけど。

『大我、今日の晩御飯なに?』
「まず荷ほどきしろバカ」

こんなやつと一緒に住むのかよ。と、げんなりしながら料理に必要な道具の入っている箱から荷ほどきした。


「は?お前、海常行くのかよ」
『そうだよー火神は違うの?』
「俺は誠凛だっつの」
『ふーん』
「……珍しいな、別々なんてよ」
『うん』

そんな事実が発覚したのが入学式の朝だった。朝飯食ってるときに起きてきたまいが海常の制服を着ていた。もう腐れ縁は断ち切れたのか、と意外に思いながらもそれ以上は口に出さないでおくことにした。高校も学校が同じとか、普通ありえないもんな。

「ほら、弁当」
『入学式に弁当は要らないよ』
「俺は部活一応見てくるから、遅くなんだよ。まあ、日本のバスケっつーのもどれくらいかわかんねえけど」
『青春だねー、いってらっしゃい』
「お前ももう出るんだよ」

入学式初日から遅刻しそうなので途中まで引っ張って連れ出したが、こいつ本当に俺が居なくて大丈夫なのか。



『おはへひー』
「……」
『弁当美味しかったよ、さすが火神』
「メシ食ったのにおしゃぶり昆布ねえ」
『食べる?』
「いらね。マジバ寄ってきたから」
『ズルい』
「ほら」
『おー、せんきゅ〜』

帰国子女と思えない拙い発音に少し吹き出しながら、マジバの紙袋を手渡す前に引っ込めた。時間も丁度いいから晩飯の準備だな。この時間に食ったらどうせ入らないとか抜かして後から腹が減ったとかうるさくなるから我慢させよう。半ばペットでも飼っている気分だ。

「これメシ食ってからな」
『えー、今日なに?』
「てきとうに炒めて何か作る」
『てきとうかー…和風がいいなー』
「はいはい」

ぐだぐだとソファーで月バスを読み始めたまいが黄瀬じゃん(誰だそいつ)とか騒いでる間に冷蔵庫の中身を見る。キャベツと鶏肉、ベーコン、卵、玉ねぎとか…キャベツと玉ねぎと鶏肉を砂糖醤油で炒めるか。明日の朝はスクランブルエッグだな。
決まったところで手早くザクザクキャベツを切ってフライパンを温める。さっさと焼いてしまおう。心なしか後ろのまいがうるさい気がする。

『ごはん出来たらオレンジジュースも持ってきて』

和風とか言ってたくせにジュースかよ。



『……』
「不味かったか?」
『美味かったの』
「良かったじゃねえか」
『うん』

黙々と食べるわりに何だか複雑そうな顔をしているまいに首を傾げる。いつもなら美味そうに食うじゃねえか。あの顔がないと作ってやったって気にならねえんだけど。ちょっと勝手な意見を頭の中で回しながらもう一度聞いてみる。

「不味くないならどうしたんだよ。今日学校で何かあったか?」
『あ…バスケ部のマネジャーになった』
「おー、そっか。良かったじゃねえか。それで?メシは?」
『あー、引かないでね?』
「引かない引かない」
『火神のごはん美味しいじゃん。私自炊出来ないから火神居ないとダメだなあ、と…んで、このごはんがないと生きてけないなあ、と……思ってただけ』
「……」
『やっぱ引くよねー』
「いや、別に良いけどよ」

それって何かいろいろ問題あるだろとか女としてどうなんだよとかツッコミどころはあるが、とりあえず、俺の心臓落ち着け。
(嘘だろこんなやつに動悸とか)

END

***
ただ私が尽くされたいだけっていう。



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