※誰も報われない話


大好きな人はまた違う人を好きになり、その大好きな人が好きな人はまた違う人を好きになった。三角関係ならぬ四角関係。でも大好きな人が好きな人の好きな人は全く恋愛に興味がなくて繋がる訳のない一直線関係になってしまった私たちはもう悲惨な事態から逃れられない。


青峰くんが大好き。好きすぎて辛いって言う人がいるけど私は辛くなんかない。こんな関係でも幸せだと思うようにしてる。青峰くんは優しいから、辛くなんてならない。青峰くんは誰とだって話すし、避けたりしないし、でも人によって態度が変わる。気に入らない人にはとことん冷たい。でもそんなちょっとキレかけのところがまたかっこいいから全然良い。近寄ったら睨まれたりするけど、暴力なんてされたことない。だからそれで十分。話すと桃井ちゃんの話ばかりされちゃうけど。


「また来たのかよお前」
『うん』
「どっか行けよ、さつきが来んだろうが」
『桃井ちゃんがそんなに好きなんだ』
「……」
『でも桃井ちゃん黒子くんにメロメロでしょ?しかもさ、黒子くんは振り向いてくれなくて、それが好きなんでしょ?』

望みないね。そう言おうとしたら本気でキレた青峰くんがこっちに寄ってきて胸ぐらを掴んで壁に押し付けた。でも、苦しいとか痛いとかそんなことより青峰くんが私に触れてたり見つめてたりする方が大事だった。だから酷いなんて叫ぶこともない私の方が付き合うとしたら楽だと思うんだけどな。青峰くん面倒なの嫌いでしょ?


『ねえ、何で桃井ちゃんが良いのに私はダメなのかな。髪型?色?それともスタイル?お腹回りは一緒のつもりだけど、やっぱり青峰くんの好きな胸かな。小さい訳じゃないけど桃井ちゃんには勝てないもんね』
「てめぇ」
『何が足りないか言ってくれたら私ちゃんと補うよ?私が変わったら好きになってくれる?』
「いい加減にしろよ、」
『そうだよね、だって私も性格変わった青峰くんに嫌いになれって言われても無理だもん』
「じゃあ諦めろ」
『さっきも言ったでしょ、無理なんだよ』

好きになっちゃって報われなくてでもそれでも嫌いになれなくて好かれたくて好みのタイプに合わせてでも好かれなくて嫉妬して醜くて汚くて仕方ない自分が嫌いになってしまうからもう青峰くんに好かれる自分が出来るしか自分を好きになる方法がないの。私をこんなに貶めたのは青峰くんなんだから、そんな良くわかんないみたいな顔したないで、受け止めてよ、私の感情すべて。

『私じゃ気持ち悪いのかも知れない、代わりなんて到底勤まらないのかも知れない。だけどそれでも一時的な凌ぎに使ってくれたら、私はそれで幸せ』
「……」
『ねえ青峰くん、私を使って。報われない恋の足しにして。桃井ちゃんの真似、私出来るから』


ね?と首を傾げると青峰くんの顔が悲しそうに歪んだ。そんな顔してほしい訳じゃないんだけどなあ。おかしいな、雨も降ってないのに、滴が地面に落ちていく。

「到底、お前じゃ似ねえよ」
『…ふふ、なれると思ってないよ、大ちゃん』

そう言って私は彼の頭を抱き、彼は私のことを引寄せる。弱虫の私たちは真実を嘘で塗り固めて蓋をしてしまったけど、私は幸せで、やっぱり不幸なんかじゃなかったよ。

「さつき…」
『大ちゃん、好きだよ』



貴方の名も知らぬ誰かに

私はなろうと思います。


END



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テーマ「人外ファンタジー」
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