毎日帰りだけチャリアカーを高尾に引かせて帰るのが日課だった緑間。ついこの間付き合い始めた恋人のまいも誘うと、その光景を何度も目撃していたらしいまいは嬉しそうに了承した。緑間も、やはり好きである人と下校するのは嬉しいのか少し浮かれ気味だった。高尾としては厄介なのだろうか、とも考えられたが、別にカップル同士がイチャ付こうがあまり関係無いらしい。そういうカップルに対するひがみの感情を持ち合わせていないのかもしれない。

そうして、チャリアカーの後ろではハートを飛ばし合うカップルが生まれるのだと思いきや、予想とは違う方向に話は進んだ。
もはやチャリアカーを引くのは高尾が当たり前になっていたのだが、一応形としてじゃんけんを信号に捕まるごとにしていた。もちろん、緑間のラッキーアイテムがなくならない限り高尾が勝つことはないのだが、ふと、まいは思ってしまった。

『私もしなくちゃダメじゃないですか?これ』
「…そうか、な?」
「必要ないのだよ」

男二人はあまり乗り気ではないのだが、まいは郷に入りては郷に従え派女子であったため、次の信号からじゃんけんに参加することにした。そしてまあ、見事チャリアカーをこぐ権利を得てしまった。

『じゃ、私こぎますから代わってください』
「えー…俺だけじゃなくて真ちゃんも居るから重いよ?」
「諦めて後ろに座るのだよ、まい」
『だって、高尾くんばかりこいでいたら辛そうじゃないですか!』

そう言われては高尾は悪い気にはならない。緑間も人事を尽くすことは良いと日々言っているため、人事を尽くそうとしている恋人に強く否定をすることは出来なかった。

予想通り、こげはしたもののゆったりと進むチャリアカーに、何だか乗っている二人まで疲れる勢いだった。次の信号まで耐えられるか心配になるくらい必死なまいにもう緑間は見ていられなかった。

「まい、代わるのだよ」
『緑間くん…』
「お前の代わりに俺が人事を尽くす」
『でも、あれだけこぐの嫌そうにしてたし』
「良いから、少し休め」

渋々と荷台へ乗り込んだまいを一撫でし、緑間はチャリアカーをこいだ。ゆったりと進むチャリアカーをこぐ緑間は思った以上に似合わない。

「真ちゃんもっとはやくー」
『次の信号まで頑張ってください緑間くんっ』
「もうちょっと静かにするのだよ!」


ゆったりとチャリアカーは進む。END



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