私はとってもとっても長い間片想いをしてきた。それが辛くて仕方無かった時なんて山ほどあるのに止められないのはそれが気持ちの問題だからだろう。そんな私は今、

「なあ、まいちゃん。青峰なんて捨ててワシにせぇへん?」

迫られていました。

『なんのことですか、』
「まいちゃんずぅっと片想いしとんのやろ?青峰に」
『よく、わからないですね』
「誤魔化さんでもええんに」

クックッ笑う今吉さんを目の前に、私は背中を壁と仲良しにさせていた。横には今吉さんの手があって、所謂今女子の中で大人気の壁ドンとやらをされていた。実際音は大きいし手は速いからビビるし手が痛そうだし良いことは無さそうだ。因みに私は壁ドンを最初壁をドンドンと殴って絶望する人かもしくは壁に相手を打ち付けてノックアウトする技だと思っていたのは秘密だ。

さてさて、この状況をどう切り抜ければいいのか。今吉さんって人の嫌がることをさせるとこの上ない程的確に嫌なところを突いてくる人だから信用ならないんだよな、どうしようか。
とりあえず腕の下を潜ろうとしたら足まで壁に付けられてしまった。なんという。

「人の話しにはちゃんと返事しいや?」
『きっと他人が見たら恐喝ですね』
「人の目は気にせんでええんや」
『じゃあ今ここで脱いでみてください』
「まいちゃんがええんなら」
『脱ぐな変態』

何でルンルンしながら服に手をかけるんだこの人は。思わず痴漢撃退方の股蹴りをお見舞いするところだった。なんやつまらん、とさっきと大して変わらない今吉さんが再び腕で私を囲む。正直困り果てた。


『…あの』
「なんや、急にしおらしなって」
『今吉さん私のこと好きなんですか、』
「……」
『違うんですか』

ええー、という微妙な顔をした今吉さん。なんだよどっちなんだよとキレそうな勢いで見つめ返すとそれ以外に何があるん?と答えと同時に逆に質問をしてきた。

『青峰への嫌がらせかと』
「んー、それはないな」
『へえ、意外』
「ワシのことどないや思てんねん」
『腹黒い人』

心が折れたとばかりにがっくり項垂れる今吉さんの腕を壁から取り外して脱出。さすがにさっきの言葉で諦めたのか、今吉さんはなにもしてこなかった。では、とでも言うように手を振ってさようなら今吉さん、と一言だけ言って数歩歩く。このぐらいなら私も足が速いし逃げられるはず。

『今吉さん』
「んー?」
『二つ訂正しますね』
「……」
『今吉さんの印象は不憫が似合う人』
「ヒッド!」
『それと、私が片想いしてるのは今吉さんですから』
「………は?」
『じゃっ』

ダッシュであの人もさすがに入って来れないだろうトイレに逃げ込もうとずっと走っていたら普通に捕まってしまった。というか普段の走ってる時より全然速いんですがいつもは本気じゃなかったんですか。


「今のホンマ?」
『まあ』
「…ほんなら先言うてやマジで…」

私の肩に頭を埋めて抱き締めてきた今吉さんに謝罪代わりに頭を撫でた。

『言ったでしょう、不憫が似合う人って。私今吉さんが不憫なところが大好きなんです』
「趣味悪いで」
『今吉さんにいじめられるのは嫌なんで』
「何言うとんねん、ワシめっちゃ尽くすタイプやねんで?」

それはそれで怖いとかは言えなかった。


長時間の片想い

END



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