誘発って言葉は聞くけれどまさか身を持って知るなんて知らなかったなぁ。
ゆったりと落ちていく太陽がとっても綺麗だと現実逃避したい気分になりながらも、やっぱりやっぱりこれは変わらないのだ。

「すまない、考えさせてくれ」

一世一代の告白が破られました。


「いやー、良く告白したよまい」
「あの緑間だもんね。玉砕覚悟であえなく玉砕か」
『みんなひどい』

慰めてくれているのか傷口を抉っているのかわからない友人が告白シーンを細部まで聞き出すものだからもう嫌だ。うっうっと茶化しながら泣き真似をするけれど辛いものは辛いからもう机から顔を上げられませんどうしようか。

ガラッと音がして緑間くんが着席する姿を見てみんなはざわざわと騒ぎ立てる。私は我関せず作戦とばかりに机に突っ伏したが友人が揺さぶる限りきっと無関係にはなり得ない。でもちらっと盗み見た緑間くんが首を傾げていたのが気にかかって、授業中緑間くんにばっかり目を向けてしまっていた。

失恋翌日なんてそんなに大したことはなく、すんなりと終わっていった。それに比べて体力の消耗は異常で、部活なんてやってる余裕は無かったため帰ろうとしたところを長身の彼が止めた。長身と言っても平均よりはという話で、ひゃくきゅうじゅうおーばーなんて非現実的な身長の彼ではない。

「ちょっと、ウチのエースに付き合ったげてよ」
『は?』
「いいからいいからー!」
『あぎゃっ』

手首を掴まれてどこかへ引っ張られるけどウチのエースとか言ってたから絶対に嫌だと全力で反対側にダッシュしていたらいつの間にか手が離されていて、そのまま階段をかけ上がっていた。きっと彼の策略なんだろうそれはバカな私にはぴったりだった。なんてズル賢いの高尾くん恨みます。ここまで来たら私が会いたくなってしまうこともわかっていたんだろう全く女心がわかっているなぁ。

「…随分と、急いだな」
『エース、様ですから』
「エースエースと言われても嬉しくないな」
『あ、そ、ごめんなさいね』

とりあえず息をさせてくださいとばかりに手を突き出してストップのポーズ。深呼吸五回して落ち着いたところで緑間くんを見たら真剣な顔してて慌てて空を見た。結構日が傾いていた。

『緑間くん部活は?』
「大丈夫だ。人事は尽くしてある」
『…ふーん?』
「まい、昨日のことなのだが」

本格的にやって来た。げっという顔を隠さずに緑間くんを見返す。相変わらず端正な顔は少し落ち着きのない目を携えていた。それを見ながら私はやっぱり後悔をする。告白をするという友達に釣られて告白してその友達も私もフラれて、何がしたいのやら。


『あの、緑間くん。私わかってるから』
「……」
『だから言わなくても』


わかるよ。そう言おうとしたら腕が伸びてきた。両サイドからで、私は逃げることも出来ずに、その光景を見ていた。白に顔を埋めさせられた。緑が額を撫でた。吐息が耳を掠めた。緑間くんが、私を抱き締めている。

「好きだ。付き合ってくれないだろうか」
『……』
「俺はまだ高校生だ。責任を取れるのかと聞かれれば及ばない部分も出てくる。それでもまい、お前の勇気を無下にできるほど、俺は薄情ではないのだよ」
『…は?』

腕の中で首を傾げた。何を言っているのだろうかこの人は。昨日あっさりふっていたじゃないか。それで今日になっていきなりなんて、メフィスト・フェレスもビックリだ。

『緑間くん、昨日私のことふったんじゃ…?』
「?付き合うのだから、それなりの人事を尽くすために考えさせてもらっただけなのだよ」
『え、あ…』

考えさせてくれって、普通断る口実なんじゃ…とか、緑間くんには通用しないのか。納得しながら未だ離されない腕の中で私は少し体を緑間くんに預ける。ぶら下がっていた私の手が、緑間くんの手に触るまでもう少し。


アンハッピーブレイク

END



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